−株入門−初心者のための株式投資心理学

■株入門、初心者のための基本知識、株の成功と失敗、勝敗を左右するセンチメンタル(株の心理)を解説します。








株式市場は人間が動かしている

株の分析手法には ファンダメンタル、テクニカル、センチメンタルがあります。


ファンダメンタルは企業の財務状況や売上、経常利益、純利益などの実態価値を元に 投資を考える方法。 テクニカルはチャートや過熱感などの市場動向、 「3日続けて上昇をしたから下がる可能性が高いだろう」というやり方。 センチメンタルは投資家の心理からどのような行動を取られるか予測して 分析する手段で、別名では行動ファイナンス、行動経済学とも呼ばれます。


これら3つをバランスよく兼ね備えると理想的な投資ができるとされています。
中でも私が最も重要だと感じるのはセンチメンタル、株の心理学です。
それはなぜかというと、株価を動かしているのは人だからです。
最近は売買の高速化やシステムトレードなどの自動売買プログラムなどが登場していますが、 そのプログラムを作るのだって人です。


そして市場の王様、大金を持っている人の心理を 知ることこそが一番株で稼ぐ近道です。個人投資家は 100万円程度の資産しか持ち合わせていませんが、 筋、仕手筋、本尊と呼ばれる大金を運用する人達は、最低でも運用金額は数十億円、 国家規模では数兆円にも上ります。 オイルマネー、ヘッジファンド、ゴロツキマネー、ディーラー、 銀行、証券会社、保険会社、国、年金、医師や弁護士、政治家などの ハイステータスなお金持ちの 資産を預かり運用している投資顧問など。最近倒産して 問題になっている企業年金なども筋のひとつです。 株式市場はこのようなお金持ちや証券会社がどのように コントロールするかで値動きが決まっている現実があります。残念なことですが、 一般大衆が損をして、資金が豊富な人が儲かる仕組みになっているのです。


このようなお金持ちが株で儲けようとすると相場を作る必要があります
持ち株の数が膨大な量なので、カモネギな素人が高値で食いつくような チャートを綿密な計画の元作ろうとします。 多くの人は、お金持ちが株を手放すときに株を購入します。 だからこそ損をする。相場をコントロールしている人の気持ちを理解していないから 損失が出るのです。損をしている8割の一般大衆の逆を行くことが利益に繋がります。 人が無意識のうちに陥ってしまっている思い込みやバイアス(判断の偏り)、その精神構造の理論を株式投資の心理学で勉強できます。






株のオンライン口座開設方法


個人投資家、あるいは法人が初めての株式取引を始めるには、証券会社に口座を開設し 、取引資金を入金して売買しなければいけません。 銀行口座からネットリンク入金にて入金、あるいは出金。 振込による入金などの方法があります。 そして、オンライン口座を開設できたら、インターネットを通じて、その証券口座で株の売買が自由に行えるようになります。


証券会社のホームページから、電話、資料請求、インターネット口座開設申し込み等をすると、 口座開設のために必要な書類が郵送されて来ます。そして、 その書類に必要事項を書き込んで返送すると、ようやく口座開設が完了します。 この間の時間は2週間〜1か月程度が目安です。 良い銘柄を掴むチャンスを逃さないためにもできるだけ早めに口座開設だけでもしておきましょう。





おすすめの証券会社


証券会社は色々ありますが、若いネット投資家世代に一番人気でおすすめできるのが SBI証券 (旧イートレード証券)です。SBI証券 は株式上場している大手サイトで、サービスが豊富な上にシンプルでわかりやすく手数料も業界最安値と 悪い部分が見当たりません。





SBI証券の特徴


売買手数料が安い


四季報、クオンツスコア分析、アナリストレポートなどの情報閲覧が無料


米国、中国、韓国、ロシア、ベトナム、インドネシア(近日中に開始)などの
外国株式、FX(為替)トレード、夜間取引(PTS)、投資信託、IPO(新規公開株)、先物、CDF、ワラント、債券、保険、などサービスが豊富



口座開設や信用取引の審査基準が緩い(20歳未満、未成年も可)


初心者向けの無料セミナーが受けられる





メリットをまとめればこんなところでしょうか。
サラッと書かれていますけど、最新の四季報情報が無料で閲覧できるのは かなり凄い事だと思います。また、手数料が安いのでデイトレードに向いているし、信用の空売りで儲けたいという人の場合、 資金が少なくても口座開設審査に通りやすいので、その部分でもSBI証券は魅力的 です。


どこの証券会社にするかは自由ですが、手数料やサービス内容を比較して吟味してみましょう。 最近はネットのオンライントレードが一般的で、店頭売買や電話営業などは 少数派になってきています。 スピードや情報量、何より手数料が安いのがオンライン口座、ネット証券口座の強みです。 これから取引をするかどうかわからないという方も一応情報収集のために 口座開設だけはしておきましょう。








株式投資の基本用語


初心者、入門者、ビギナー向けにこれから株を始める人のために基本、基礎的な株式の知識と用語を解説していきます。 財務データの見方や用語集を知っている人、ファンダメンタルに興味ない人はさっと読み飛ばして差し支え有りません。





株式市場の種類と基準


株式を売買する市場は東京、大阪、名古屋の三つの証券取引所があります。
それぞれ第一部市場、第二部市場があります。
また、東京証券取引所には新興企業を対象とするマザーズ市場ががり、
大阪証券取引所はヘラクレス、名古屋証券取引所にはセントレックスがある。
会社の規模や株式売買高により一部か二部を分けます。
原則としては第二部上場から、一部上場へと原則ですが、 直接一部に上場する企業もあります。


第一部に直接上場するには、流通株式数二万単位以上で、時価総額500億円以上などがある。 第二部市場企業が第一部に移るには、流通株式数が2万単位以上、流通株式の 時価総額20億円以上、流通株式が上場株券等の35%以上のほか、 株主数、売買高といった、第一部指定基準を満たさないといけません。


この他、かつては店頭市場だったジャスダックは2004年12月から取引所となり、 2010年4月には大証に吸収合併されました。
札幌証券取引所、福岡証券取引所は地域を中心とする ベンチャー企業のための市場で、流動性がほとんど皆無なのが難点。 個人投資家の投資対象としては不向きなのでスルーしておくのが無難です。





注文の仕方と信用取引


株式投資行うにはまず、SBI証券などから取引口座を開設します。 ちなみに手数料はSBI証券 が一番割安です。安いだけでなく、トレーディングツールの充実、夜間取引(PTS)、信用取引の審査も緩く 低資本でもかなりのサービスが受けられます。
ネット、あるいは証券会社の店頭で申し込みを行うと、株式委託注文書が渡されるので、そこに住所、氏名、電話番号、連絡先などを記入し、 支店に口座が開設されます。
これで 多くの証券会社ではネット取引ができるようになります。


売買注文を出すときには注意点があります。
何の銘柄を何株買うのか注文を出さなければいけません。
最低売買単価は1株〜1000株まで銘柄によって異なります。
株の注文方法には、成り行き(成行)、指値、寄り付き、大引け、加重平均などの 方法がありそれを指定します。ネット証券会社によっては 、逆指値、指値成行、ダブル逆指値なども認められています。


また、株式には現物取引と信用取引に分けられています。
現物取引は自分の現金で株券を購入するのに対して、信用取引は 資産を担保に会社からお金や株を足りて運用します。 信用取引は多くのところでは、保有資産の3倍程度まで貸付されます。 現物とは違い保有しているだけで金利が付く。


信用買いの場合は金利を毎日数%支払い、 空売りの場合は金利によって逆に一日数%の利益がもらえます。 信用買い、空売りは株やお金を借りているため、将来的に返済しなければいけません。 空売りの状態を売り建て、信用買いを買い建てと呼びます。
信用取引はハイリスクハイリターンで、損失が膨らむと 強制決済が行われ、全ての建て玉を強制的に返済させられてしまいます。 その時の損失は莫大になります。逆に含み益が膨らめば利益も莫大。 ただ、個人投資家の動向はプロの相場師達にとっては筒抜けも同然なので、 信用買いをした途端値が下がるのは日常茶飯事です。動きを悟られないためにも 信用取引はオススメできません。





税金、手数料


株式投資の利益には2種類あります。


配当金(インカムゲイン)
値上がり差益(キャピタルゲイン)



これらの収益の税率は原則として20%(所得税15%、地方税5%)ですが、
現在は優遇税制が適用されているので10%(所得税7%、地方税3%)が 引かれます。また、譲渡損失は確定申告をすることで 3年間税金を控除できます。





出来高、売買代金


株式市場のエネルギーを計るモノサシになるのは売買高(出来高)です。
右肩下がりの下降トレンド中は、出来高が少なくなり下げ続けます。
株価の上昇は売る人が多くなければ起こりません。
相場は底値を付ける瞬間に将来を悲観し失望売りが出る。
そしてそれを逆に拾おうとする勢力が出てくる。その時が転換点になります。
相場が上りはじめるには出来高という市場のパワーが無ければ上がりません。 他の指標がどうこうよりも、この出来高、需給状況こそ最も大切なものです。
簡単にまとめてしまえば上げ相場では増加、下げ相場では減少します。





PER(株価収益率)、EPS(一株利益)


PER(株価収益率)、EPS(一株利益)はパッと見で会社の業績を判断するのに 使えます。
PERの計算は株価をEPSで割って算出します。
現在の株価がEPSの何倍に買われているかを見るものです。
このEPSは予想利益をベースにして計算します。株価は現在の実績よりも 将来の利益を予見して織り込んでいくものです。 そしてPERの倍率が高ければ割高、低ければ割安と判断されます。 ただ、この倍率に絶対的な基準や決まりが無いので、 中にはPER100倍、999倍、0.3倍、マイナスの会社まであります。 結局のところ需給状況が全てであり、あくまで目安としての指標でしかないのです。





PBR(株価純資産倍率)


収益力から株価を見極めるPER(株価収益率)に対して、
純資産から 株価を判断する尺度としてPBR(株価純資産倍率)があります。
株価をBPS(一株当たり純資産)で割って倍率を求めます。
これが1倍を割り込めば底値圏、0.6倍以下は超割安と言えます。
ただし、含み損や見えない借金などは反映されていないため、 PBRが低い会社は将来が暗い低迷企業か、倒産シグナルの 可能性も高くなかなか手を出しづらいものです。
PBRが1倍を割り込んでいる状態は、会社が解散した時に 株主に分配される取り分よりも、割安と言う指標です。 このため買い時だと判断されます。
景気が上昇、拡大期はPERやブーム、流行などの勢いが重視され、
景気が下降、後退傾向の時期はPBRで理論株価が割安の銘柄を買われやすい。





ROE(株主資本利益率)


ROE(株主資本利益率)は、株主の持ち分ともいうべき株主資本に対して 何%利益が上がっているかを見る指標で、機関投資家、 特に大量の株式を保有する生命保険会社の株式運用で、この指標を重要視される。 実際のところ外国の投資家達も日本市場のROEを最も重要視していると 言われており、財務状況の安定性がわかる指標です。
株主資本は総資産から借入金などの負債を引いた資産です。
活用法は、この株主資本に対する税引き利益の割合が高い時は評価し、 低い時は資産を有効に使われていない会社だと診断できます。








人の心にはフィルターがある


何か行動を起こすとき、選択が必要な問題を考えると、 通常、人はフレームという心のフィルターを通して問題を考える。 こうすると、問題が単純化され、決断が容易になるからです。 このように人の心にあるフィルター、いわゆるフレームには 複雑な現実を単純明快にし、それに対する理解を促す働きがあります。


フレームは心の窓であり、室内から窓を通して見える景色の範囲は 全体の一部分です。窓がいくつかあれば、それぞれの窓から見える景色は 違って見えます。この心のフレームは人それぞれの偏見や思い込み、 信念、信条、思考回路によって変化しそれぞれ違う。 このフレームを変えると普段とは異なった景色が見えるのです。 お金持ちと貧乏人の見ている景色は違います。 同じ物や風景を見ても何が見えるかは人によってまったく異なります。これは株でも同じことです。


同じ銘柄のチャートを見ても売買の意思決定は様々。そして 重要なのは大衆にはフレームに共通点があること。これこそが株の心理学の基礎的な考え方です。
そしてある特定のフレームを用いて現実を見る事をフレーミングと呼びます。
人は日常生活ではフレームが存在することを意識せず無意識で使っている。
これを分析することで、人が縛られている本能の行動がわかるようになります。





アクセシビリティ


人々が示す行動は全てアクセシビリティと深い関係がある。
アクセシビリティとは文字通りアクセスが簡単にできる内容、 用意に頭の中に思い浮かぶ情報を意味します。 語訳として入手容易性ともなっています。
例えばお店の商品を値引きする時、300円の商品を10%割引するよりも、 30円引きにした方が、計算が容易で アクセシブルとなる。同じ状況の代替的な事柄でも、 アクセシビリティが容易なことの方を選びやすい。
満足感や不満、利益や損失も考えが容易なものほど強く意識される心の仕組みがある。 この思考回路が暗示にかかりやすい大衆の行動を支配している。








表現によって変わる人の感情


同じ意味でも言葉遣いを変化させるだけでイメージ変わってしまうのも フレームの効果です。 例えば株式分割を昔は無償交付と呼んでいました。 株式分割とは、流動性向上を目的として、例えば現在の株1株に対して1株を新たに交付し、 株価を半分にする。実態として資産が増加しているわけではないのに、 無料で貰えるから得だと思ってしまう。


医療保険で無病息災だった時に受け取れる「ボーナス」という報酬支払制度は、 ただ単に多く払いすぎた保険金が一部返却されているに過ぎないので、 感謝する対象自分の健康であり、保険会社ではない。


その他にも懸絶な経営が取り柄だった会社が、仕事内容に変化が無くても、 社名変更をしただけで、人気銘柄に変貌する例は現実にいくらでも起こっています。


人の心はアクセシビリティ(理解しやすいこと)に依存しがちです。 一見耳触りの良い言葉に感じても実態はそうでもないことがあるので注意しましょう。








心の会計


お金の出所が働いて稼いだ給料か、博打で稼いだのか、保管期間は長期か短気か、 使い道は遊びの金か教育資金かによってお金を分類し、扱いを変える傾向です。 心の会計は、金銭が絡む意思決定問題では極めて普通に見られるバイアス(意思決定の偏り) です。


配当を好む個人投資家が多い理由のひとつは心の会計に原因があります。
配当は株価上昇時は、売却益以外の儲けとして喜ばれ、株価下落時には 逆行次の助けとして重宝される。 値上がり差益は水物で不安定だけど、配当金は元本が温存されるという 思い込みがある。しかし、現実としては株式の配当金は 会社の資産を社外に流出させることであり、配当を支払った分だけ会社の価値は下がる。 自分に支払われた配当金は、自分のものになるが、他の株主に支払われた配当金は 自分にとってはマイナスにしか作用しない。


株は値上がりしても、売らないといけないと思うが、配当だったら、 株券を持ちっぱなしだから安心と考える人もいる。 しかし実際は株券を売却して消費に充てるのも、 配当金を消費に充てるのも同じことです。 さらに実際は、株式売却益にかかる税率の方が配当の税率より安いことを考慮すれば、 株式投資は配当ではなく、値上がり益を受け取る方が圧倒的に効率が良いということになる。





損失をひとまとめにしたがる心理


冷蔵庫などの家電製品を購入する際、 店員の推奨するままに追加の保険に加入する人が結構いる。 通常の心理状態では、家電製品に保険を掛ける事なんて思いつきもしない。 しかし、購入代金を支払うついでだからという 気持ちになると、購入代金に対して少額と思える保険料 という支出に踏み切らせる。 このような心理が損失をひとまとめにしてしまう傾向です。





心の会計では、同じ現金でも「消費しても良いお金」「使ってはいけないなお金」を明確に区切る心理の仕組み(バイアス)がある。 でも実際は「安全」「危険」と思っていることが違っていたり勘違いしていることもあります。 悪銭身に付かずとは心の会計が作用した結果無駄使いという行動を起こしてしまう人間心理を 表している格言なのです。








損失確定を先送りしたがる心理


株式投資をしていると、自分の保有銘柄の株価がどうなっているのか 四六時中気になってしょうがない人が多い。 このような性向は近視眼的損失回避(早すぎる損切り)を引き起こすので 値段の確認はほどほどにした方が良い。 株式投資は短期的な値動きに振り回されないように注意して保有 していたら、いつの間にか株価が上がっていたというのが理想的です。 とはいっても、やはり元本割れでマイナスになるのは気分が沈んでブルーになるもの。 人が損失に直面した場面でやりがちな行動の問題があります。


ある銘柄A、Bをそれぞれ1万円で買い、1か月後値段を見ると
Aは1万五千円、Bは五千円になっていた。
この時に投資戦略を見直したいと考えた、どちらの案を採用しますか?


1、損しているBを売却し、儲かっているAを継続保有する
2、儲かっているAを売却し利益を確定し、Bが回復するのを待つ



大抵の個人投資家は2番の案を採用する。1番では、せっかく儲かっていた ものが元本割れになる可能性もあるし、含み損を売却するとその瞬間に 損を実感するからです。 これこそが損失先送りバイアスと呼ばれるもので、 塩漬けや大損の引き金となる心理です。


どちらの投資戦略も実質的には同じように値段が上下するのだけれど、
損失の確定よりも利益を確定したがるバイアスが大衆にはかかっています。
つまり、多くの個人投資家は株で大儲けできない心理を持っているのです。
損失の確定は先送りし、損切りをいつまでたってもできないのに、 利益確定だけは早く、値上がりするのを我慢できない。銘柄によって その投資判断が正しいか誤っているかはわからないけれど、 「大儲けできない」という極めて重大な制限が8割の個人投資家に備わっていると言えます。


現在元本割れでマイナスの株が上昇してきても、元本に戻れば 「やれやれ売り」をしてしまい結局プラスマイナスゼロで決済する人が大量にいる。 元本割れから元本回復へと推移すると人はとてつもない喜びがあるのです。 それだけ、人々は「損失」を確定させたくない一心で取引をしていると言えます。
実際は「見切り千両」という格言もあるように、損失が出たら早めに手放した方が お得なことが多いのにもかかわらず損失を先送りしてしまう心理傾向がある。





モメンタム効果


過去一定期間収益率が高かった資産を買い、 過去一定期間に収益率が低かった資産を売る戦略をモメンタム戦略と呼び、 この戦略が生み出す超過リターンをモメンタム効果と言う。 理論的にこの投資戦略はリターンが大きいことがアメリカの学者によって実証されている。
儲けている投資家は、上昇トレンドの銘柄を見るや次々に買い増し、 駄目そうなものはすぐさま切り捨てる(空売りする)というわけです。 強気ではさらに資金を張り、 弱気ではすぐに逃げるという単純に考えればできることが、 損失先送りのバイアスが理由でできない。これが株で稼げる人と稼げない人の心理の 違いです。
チャンスが来てる時は強気で押す、運が来てないと思ったら引いて相場を休む。 プッシュとプルのバランス感覚は何事でも重要なものです。








つい無駄遣いしてしまう−あぶく銭効果−


宝くじを300円買っても、購入者に還元されるのは半分の150円程度だと言われている。 これなら夢を追いかけないと割に合わないという気持ちになる人が多いのか 、テレビCMが盛んに流れている。 その宣伝では宝くじに当たった人は賞金で旅行やどんちゃん騒ぎの宴会など をやっている、非日常的なことが映し出される。賞金が日常ではしたくても できないことに使われることをイメージしているのでしょう。 当選者が、全額貯金している絵じゃコマーシャルにならない。


人は他人から貰ったお金や、偶然得たお金は容易に手放してしまう
普段はまったく興味が無いブランド品でも、たまたま儲けたお金があると、 ついつい買ってしまうことがある。これは宝くじが当たった時に、 当選者が宴会や飲み会でジャブジャブお金を使ってしまう事、 これを「あぶく銭効果」と呼ぶ。 損をしても惜しくないお金はあまり考えずに使ってしまう。


例えば個人投資家の多くは、株式投資のことをあぶく銭だと認識している。 「余裕資金だから負けてもいいや」「余り金だから遊びでやってみる」 なんてことを言っている事をよく耳にする。 つまり、あぶく銭だと認識しているお金を持っている素人は、リスクを好む傾向があるという。 これは非常に危険な心理で、初心者や入門者、ビギナーが一度は通る道であり、 少し利益が出た瞬間も、あぶく銭だと無意識に考えてしまい、慎重に考えず思いつきで相場に 参加してしまう。


意思決定は通すフレームによって左右される。
同じ現金でも、「どうでもいい現金」と「絶対手放したくない現金」では価値が変わってしまう。 プロや上級者はここら辺の区別が無く、冷静で客観的な判断力がある。 少しお金が余っている、少し株で稼ぐことで成功した瞬間こそが最も危険で、 あぶく銭効果の負の側面が出やすい。この瞬間に リスク商品に投資して大失敗する。 詐欺師が初めに利益を還元しておいて、 後にもっと突っ込ませる手口と同じです。 少し元本からプラスになったからと言って油断するのは禁物です。








労力を取り戻したい心理−サンクコスト効果−


米国の投資の達人ウォーレンバフェットはこんな言葉を残している。
「自分自身が穴の中に落ちてしまっているのに気づいたとき、あなたがとれる 最善策は、穴を掘るのをやめることだ」と。時には諦める事や引き返す事が 大切、勇気ある撤退こそが次の勝負で勝利に結びつく。


自分が既に使ってしまっていて取り戻すことができない、お金、時間、 労力などをサンクコストという。多くの人はこのサンクコストにこわだるが故に 、普通行わないような選択をしてしまうことを「サンクコスト効果」という。心理学用語では 別名「認知的不協和」とも言い換える事ができる。


サンクコストを重要視する心理は、一見すれば「もったいない精神」と 一致するようですが、サンクコスト効果は通常あまりいい意味では使われない。 株式投資の場合、一度銘柄を買って値下がりした時、多くの初心者は「 ここまで損をしたんだから最後まで掴んで元を取り返す」と考える。 これはサンクコスト効果の最たるもの。 当初の決定が誤りであったにもかかわらず一発逆転、一攫千金を狙って 最後まで自分の愚かな選択に固執して賭けてしまう。


それは「含み損を抱えている」というコストを背負っているから する選択であり、株券を一切持っていない状態ならこのような選択をしない。 損失先送り効果もサンクコスト効果で説明ができるもの、 さらに現状維持バイアスという現状を維持したい気持ちもサンクコスト効果の一種です。 誤った戦略を続けた場合損失金額が拡大するケースがある。 自分の選択が間違いだと気付いたとき、冷静な判断力がないとわかった時は すぐにリスクを回避するのが正しい行動である事が多い。 ウォーレンバフェットという優秀な投資家が言う言葉はバカに出来ないものです。








後悔を認めたくない心理


ほとんどの人は現状維持を優先し、本能的に変化に抵抗する。 優柔不断は誤った判断よりも大きなコストを払わせる。 人間は過去の誤りを正当化しがちです。過去の失敗を 頑なに認めないことは投資のポートフォリオに悪影響をもたらします。


人が後悔をする原因には三つのキーワードが存在している。


・「他の選択肢との比較」
・「事実に反する推論」
・「積極的な方針転換(コミットメント)」



実際は実現しなかったけど、実現したかもしれない未来。 「ああしておけばよかった」という仮定。いつも 習慣としてやっている行動を変更して行ったこと。 これらの三つが後悔が大きくなる理由です。


特に後悔の精神的ダメージが大きくなる理由は、コミットメントの量が大きい時。
つまり、自分の強い意志で方針転換を行った結果失敗した時 にコミットメントの量が多くなる(後悔の度合いが強くなる)。


一般的に失敗の結果は損失と認識されますが、 これは単なる事実の認識にとどまる。ところが後悔は 、この損失に失敗したことに関与したという「責任」が 加わった感情で、単なる事実認識である損失よりも 心理的な負担が大きい。そのため、損失の反意語は「儲け」 ですが、 感情である後悔の反対語は「喜び」なのです。
自分の関与した割合が大きくなればなるほど、 その後悔を認めまいと意地になり、無意識に心理的な作用が働く。
後悔が大きいのは、不作為や偶然の出来事よりも、 自分が作為的に行ったことです。これはコミットメントの量が大きいからです。


次に、あと少しという僅差でチャンスを逃した時も後悔が大きい。
「あともう少し勉強しておけば難関資格に合格できた」
「宝くじがあと一つ番号違いで大当たりだった」
「あの時時間があれば彼氏、彼女とうまくいっていた」
など、他の選択肢が具体的で、あと少しでとり逃したものは 、それをまざまざと思いだしやすい。しかも、つぎ込んだ努力の量が多いから、 サンクコスト効果のせいで後悔も大きくなる。
そして、いつもはしない余計なことをして失敗すると後悔の量は増える。
いつもと同じ選択であれば選択肢を考慮する必要性が薄いから、「事実に反する推論」 をする機会も少なくなる。しかし、余分なことをすると、コミットの量が増えるから、 後悔も大きい。これは作為と不作為の違いにも通じる。


人は過去を悔やんで悩んでいる状況では正常な判断ができない。
後悔もその一種で、普段とは違う異常な投資行動を引き起こしてしまう引き金になる。 塩漬けや、マネーゲームのような銘柄への投機的行動もこのような心理状況の時にしてしまう過ちです。 焦りや後悔は多くの初心者、入門者、ビギナーがハマッてしまいがちな精神的な罠なので注意しましょう。








後悔を回避する方法


失敗したことは「失敗した事実」として諦めることはその後の物事をスムーズに することに繋がる。いつまでもグダグダと悩んでいると、恋愛でも仕事でも 株式投資でも良くない結果を招いてしまう。だから、 後悔をしそうな状況になったら、後悔を回避したり軽減して、心をリフレッシュさせること が望ましい。





後悔回避の3原則


どういう場合に後悔が大きくなるのか理解することは、どうすれば クヨクヨ過去を悩まずに進めるかどうかに繋がる。 後悔の強さはコミットメント、責任の重さに比例するから、 これを逆手に取れば後悔を減らすことが可能となる。 後悔回避の要点は、コミットメントを少なくすること、 責任を軽くすることです。





1、定型的なルールに基づく決定をする。決めたのは自分の意志ではなく、 形式的なルールだと思えば精神的な負担は軽くなる。他の選択肢と比較する機会も 減るので、後悔することも少ない。


2、中立的で無難な選択をする。他の場合にはしないような特別な選択を するとコミットメントの量が増えるので、後悔も大きくなる。 極端な行動の回避とも言える。


3、他人の知恵を利用する。ストレートに言えば、専門家やコンサルタントなど 、自分以外の誰かに責任転嫁する。責任が軽くなった分だけ後悔も軽減される。








やらなかったことへの後悔


後悔が時間と共に成長するケースがある。 「何かをしたことの後悔は何かをしなかったことの後悔よりも大きい」 という公式は必ずしも成立しない。具体的には、 仕事が忙しくて子供を十分に構ってやれなかったこと、亡くなった両親と 不仲なままだったことなどがある。 こういう場合は時間と共に後悔が成長することが多いという。


人々は短期的には失敗した行為の方に強い後悔の念を覚えますが、 長期的にはやらなかったことを悔やんで心を痛める。 これらの共通点は後悔が時間と共にじわじわと成長していく点です。 したことの失敗はすぐにわかりますが、 しなかったことの失敗は将来的に理解することが多い。 問題があるから失敗するのですが、 失敗が顕在化しないので、最初はその問題の 重大性を過小評価してしまうのです。これは自分の責任に繋がる。


次に不作為の問題点が次第に明らかになっていく過程で、 何度も改める機会があったにもかかわらず、そのまま 放置してしまったわけです。改めるチャンスが 多いということは選択肢が多いことであり、 それにつれて事実に反する推論をする機会も増えると考えられる。 これも「あのとき、ああしておけばよかった」という後悔に繋がる。 また、時間の経過が前提になるので、気づいたころにはすでに手遅れの 可能性も高い。だから、後悔はボディブローのようにじわじわと効いてくる。








一部の金持ちの場合


しなかったことの後悔と関連して、カーネマンとリープの論文に 金持ちに関する気になる話が載っているので紹介します。 日本の富裕層に当てはまるかどうかはわからないですが、 富裕層を顧客にビジネスをしたい人にはどこかで役に立つ知識かもしれない。 もっとも、金持ちになりたい人になるかどうかはわかりませんが。


お金持ちは普通、貧乏人と同様に、失敗した場合、しなかったことよりもしたことを後悔する。 これは皆と同じだ。ところが、機会を逃したことを後悔する少数の金持ち層が存在し、 彼らは失敗に終わった試みを後悔する普通の金持ち層よりも大きなリスクをとる傾向があるという。 そのことは彼らのポートフォリオの株式比率が尋常ではなく高いことからわかるそうです。 しかも、満足あるいは後悔のどちらの結果に終わったとしても、原因を運や偶然のせいに しないという。


成功は自分の能力、失敗は運のせいにするのが普通なのに、 これはなかなか興味深い。この種類の金持ちは自分は有能であるという 感情が人より強力なのだという。つまり自信家、ポジティブ思考なのです。 だからリスクを進んで取り、その結果も甘んじて受け入れる心理性質を持っている。 全ては自分のコントロール範囲内にあるという確固たる自信なのでしょう。 日本人よりも欧米人に多くみられる経営者像の典型とも言える。








現状維持バイアスによる思考停止


例えばみなさんは現金を持っている時、株やFX、不動産投資や駐車場ビジネスなどは やり方が難しくわからないので、とりあえず金融資産は銀行の定期預金に 預けておくという人が多い。どんなリスクがあるかわからない新規の金融商品 にポジションを置くよりも、馴染みのある低リスクの商品の方が良いものだと感じるわけです。 このような選択の偏りは「現状維持バイアス」の表れです。


現状維持という言葉はわかるけど、バイアスはよくわからない。 なんかよくないことなのかと不安に思う人もいるかもしれないので、 行動経済学で頻出のバイアスについて説明します。
バイアスのある行動をとったとしても、結果が必ず悪くなるというわけではない。 しかし、バイアスのある行動とこうすべきだという行動とにはズレがあるので、 期待通りの結果にならない確率は高まる。 要するに、ある選択が現状維持バイアスの影響を受けているということは、 理論的ではない選択と言うことになる。


私たちにとって、比較の基準である参照点は現状にある。
例えば転職を考える場合、現在の仕事内容や待遇と新しい仕事の収入面などを 比較し判断する。こういう場合、リスクをとって転職したとしても、成功する可能性と失敗する可能性が 同じ程度ならば、利益と損失の非対称性から失敗の痛みの方が勝るので、 人は今の仕事を続けることを選択する。


結局、現状維持バイアスも、失敗の痛みは成功の喜びの二倍以上あるという損失回避の心理が 根本原因になっている。 このことは、一般的に現状を変える不利益の方が、利益よりも大きいことを意味している。 したがって、余程優れたシュミレーション結果が出なければ、 人々は革新的な選択肢やチャレンジを避け、保守的に現状維持を選択しがちになる。 物理学に完成の法則と言うものがあるが、精神上でも、 その場にとどまろうとする惰性の法則が働くのです。 「投資金額の10倍儲かる」「絶対稼げる」なんていう詐欺的な謳い文句には心が なびいてしまうのに、「年率10%」という 堅実な儲けには一歩踏み込めない。現状維持バイアスにはそんな人間心理が伺えます。


現在含み損を抱えている塩漬け銘柄を損切りして 新しい投資先に資金を移転するという行動は、 損失の二倍以上の利益が予測できなければ多くの個人投資家は、その投資戦略を実行できず 泥沼のポジションにハマってしまうということです。 人は現状を変化させようとする場合、ある種の楽観的思考を必要とするのです。








決定麻痺


現状維持バイアスに捕らわれていたことを知り、反省した貴方は、 今度は投資信託に興味を持ったのでいろいろ資料を請求してみた。 すると、資料が沢山送られてきたのだけど、あまりに種類が多すぎて迷ってしまった。 それで面倒くさくなって、投資するのを先送りすることにした。 と勝手に決めてしまった例ですが、このような行動を経済学者のベルスキーとギロヴィッチは 「決定麻痺」と呼んだ。


実は決定麻痺と現状維持バイアスの違いは状況の違いだけで、 決定の先送りと言う行動は同じです。 現状で何かが既に選択されている場合は、決定を先送りすれば 現状が維持される。ところが、現状が白紙の状態であれば、 現状維持も決定麻痺も白紙状態の継続になる。 つまり、同じ決定の先送りであっても、現状の選択が既に行われている時は現状維持、 白紙の状態の時は決定麻痺となるのです。





ある選択肢が他の選択肢よりも倍以上優れている事が明らかでないと 、その選択肢に絞り込むことは難しいのだから、損失回避でも説明できる。 それと、迷った挙句、決定を先送りしてしまうのは、失敗した状態を想像して それを避けようとする後悔回避が大きな働きをしていると思われる。 失敗した状態を想像するという「事実に反する推論」が 後悔のキーワードです。


そして、意思決定過程が複雑になればなるほど、魅力的な選択機会が増えれば増えるほど、 そして選択肢に関する情報が増えれば増えるほど、私たちは間違った選択をして後悔 することを想像し、気分が落ち込んで不愉快になる。 そこで、決断さえしなければ当面は後悔することも避けられると考え、決定を先送りしてしまうのです。 あちらを立てればこちらが立たずというわけで、あれこれと悩むと全部面倒くさくなってしまう。 しかし、決定を先送りしても、結局五日は決めなくてはいけなくなる。 それにいつまでも決定を先延ばししていると、長期投資の複利効果や時間分散効果の恩恵に あずかれなくなるので、将来の大きな機会損失に繋がるかもしれない。


将棋のプロ、羽生善治先生は「直観力」を大切にしているという。
ある局面を考えている時、一番初めに頭の中にパッと思い浮かんだ手が 有効な策である場合が多いという。その手を考えた後にあれやこれやと 頭の中に浮かんでくる不安材料や「こっちの方がいいかも」という思いはハズレになることが多い。 羽生さんのように将棋を深く研究し追求したからこそできる芸当かもしれませんが、 いつまでも現状維持で決定を先送りするのではなく、 思い立ったらすぐ行動するような、直観力重視の方が物事はうまくいくのかもしれない。


恋愛も結婚も仕事も、結局保守的に悩んでいるよりも、 チャレンジした方が大抵はうまくいきます。中国の思想家の孔子もこんな言葉を残している。 「巧遅は拙速にしかず」。 「巧遅」は、出来は良いが完成が遅いさま。 「拙速」はその逆。時間をかけて良いものを作るよりは、 出来が悪くても迅速で早いほうがいいという意味の表現。 老子の教えにも「結果は早い方がいい」という意味合いの言葉もあります。 時間の流れはあっという間です。現状を打破するような 案、アイディアが思い浮かんだらすぐに実行した方が成功確率は高いのかもしれません。








上昇選好−末広がり願望−


人には現在から将来にかけて末広がりに良い結果を拡大させたいという 欲求、心理が備わっている。
調査によると、日本でも米国でも、代金支払いは前払い、 賃金は後払いが好まれるそうです。 これも一種の上昇選好です。 さらに、賃金プロファイルでも、徐々に増加するパターンの方が、 徐々に減少またはフラットのパターンよりも好まれる。 これを実現するのは年功序列型賃金体系です。


上昇選好は良いことだけではなく嫌なことでも観察され、
この場合は不快さが徐々に減るパターンが好まれる。
100の仕事をしなければならない場合、先に頑張って半分の50を終わらせてしまい、 その後20、10、と仕事量を減らしていく計画が実行されやすい。
プラスだけでなくマイナス方向でも上昇選好の 心理が働きます。





上昇選好が起こる理由


人はなぜシークエンス(出来事の順番、時間軸上に配置された一連の出来事、事態、結果)を意識すると 上昇選好が起きるのでしょうか。


1つの説明は「享受と不安」です。
利益を得る場合、 上昇するシークエンスによって意思決定者はそのシークエンスの 終わりまで最良の結果を享受することができる。 また、損失の場合は、望ましくない結果を得ることで不安がいち早く終わってしまう。 どちらにしても上昇するパターンが好まれる。 また、効用関数の形状から、利益は分散して受け取る方が 効用は高く、損失はひとまとめにするほうっが非効用は低い。


2番目の理由は「順応と損失回避」です。
人々は価値を富の水準ではなく、儲けか損失かで評価するのと同じように、 シークエンスを水準の連続と言うよりはむしろ上昇と下降の連続として認識する。 そして、私たちは刺激に次第に順応していく傾向がある。 したがって、新たな刺激はその順応水準(参照点) と比較されるため、下降シークエンスは損失を発生させるので魅力的ではない。


楽しい予定があると、血圧の低下や脳波や脈拍の安定といって身体状況の好転が 見られ、気分も良くなるという心理学の研究もある。 さらに、人は楽しいことが待っていると健康になり長生きできるという研究結果もある。 この研究は、誕生日より少し前に亡くなる人は相対的に少なく、 誕生日より少し後に他界する人が相対的に多いことを明らかにしている。








人が因果関係を判断する方法


投機的な一般大衆を救うことは難しい。彼らは数でいえば、3までしか数えられないほどである。 彼らは何らかの動きがあると思われる銘柄ならば、値段を見ずに買うからだ。ベンジャミン・グレアム


人間の行動は明確な根拠や理由によって判断されるのではなく、 自分独自のヒューリスティック(発見的手法、経験則)や歪められた 考え方を基にして行われることが多い。 自分の思考回路が何らかの感情に支配されていないか常に気を付けるようにすると、 投資の初心者から上級者へとステップアップすることができる。





行列のできるお店


ちょっと小腹がすいた時、ラーメンでも食べようと考えていると、 ちょうど行列ができているお店があった。 「きっとおいしいに違いない」と思って並んでしまった なんていう経験をしている人は多い。 このような短絡的な判断を私たちは日常よく行っていいますが、 期待が裏切られることもままある。
その論理学上の理由は、必要条件と十分条件の混同です。 ロジカルシンキングを志す場合、このことは重要なので少し煩雑ですが 説明しておきます。


仮に「その店のラーメンはうまい」なら「 その店に行列ができる」が正しい命題であるとする。 この時、ラーメンがうまければ必ず行列ができるから、「その店のラーメンはうまい」ことは 「その店に行列ができる」ための十分条件になる。
しかし、行列ができるのは近所に適当な店がないことが原因かもしれないから、 「その店に行列ができる」ことは「その店のラーメンはうまい」ための必要条件ではあっても 十分条件ではない。


このように、私たちは必要条件を満たす証拠と十分条件を満たす証拠の区別 がいくぶん苦手なのです。 また、自分の信念ではなく他人の信念に従う人々が次々に現れるという 情報のカスケード(雪崩的な群集行動の一種)も 、行列ができるひとつの大きな理由かもしれない。





ついでに説明を加えると、本当にラーメンがうまいので人々が 行列を作ると考えるのは、内的要因(気質・能力)による 説明です。ところが、近くに食事をする適当な場所がなく、 そのラーメン屋の手際も悪いため、行列ができたと考えるのは 外的要因(状況・環境)による説明です。 この内的要因と外的要因の区別は心理学ではよく使われるので知っておいて 損はない。


自分の失敗は外的要因(環境や運)のせいにするのに、他人の失敗は 内的要因(能力ややる気)のせいにしてしまう心理の傾向を「基本的帰属の誤り」という。また、良い結果は自分の能力や行動の せいにし、悪い結果は環境や運のせいにするのは「自己責任バイアス」 という。





しかし、私たちは正しい答えが必ずしも得られないと知っている場合でも、 「行列ができているラーメン屋はきっとうまいに違いない」といった 推論をよくする。このような近道(ショートカット)をする推論を ヒューリスティックによる推論という。 これを利用すると時間と労力の節約になるため、ヒューリスティックは 日常生活で多用される。


ヒューリスティックを使うと、うまくいくときもあれば失敗するときもある。 心理学の研究によれば、このヒューリスティックによる判断は8割方正しいとされている。 このようにうまくいく場合のヒューリスティックは「発見法」あるいは「簡便法」 であり、失敗するときのヒューリスティックは「短絡思考」です。 短絡的とは、広辞苑には「筋道立てて考えずに物事を結び付けて論ずるさま」 とあり、物事を結び付けるところがヒューリスティックにぴったりです。








代表性


株式投資の戦略に大きく影響するのは代表性です。
これにはランダムな現象をトレンド(同じ項が続くこと=ラン) と思い込む偶然の事象に対する過剰反応、 単純な平均への回帰に基づく現象を特別に意味のあるものとみなす回帰の誤謬(ごびゅう) 、インプットデータと結果の見かけ上の関係から本当は存在しない 因果関係や法則を認識してしまう妥当性の錯覚などの心理が含まれる。
投資戦略に影響する典型的な例として、偶然の減少に対する過剰反応を取り上げます。


株価の値動きに関して、人々には、株価の間近の動きをそのまま 将来へと外挿ししてしまう傾向がみられる。 たとえ本当はそれが偶然の動きだったとしても、 チャートが上向きで値上がりを続けた銘柄はそのまま 値が上がり続けるかのように思い込み、 値下がりを続ける銘柄はどこまでも下がり続けるかのように錯覚してしまう。
しかし、ものごとの多くが平均に回帰するのは世の習いなので、 上がりすぎれば平均に戻り、下がりすぎても平均に戻る。 したがって、単純な外挿は期待外れの結果に終わることが多い。 そこで行動ファイナンスでは、こういった過剰反応が逆張りのリターンを生み出す原因になると 考えるのです。





ランダム系列の誤認知


「ここ数日株価が上昇し続けている。これはきっと何か特別なことが起きる前兆に違いない。 乗り遅れないように仕込んでおこう」強気相場の上昇トレンドのとき、 このように考える個人投資家は多いかもしれない。 この投資判断、相場観、勘が正しいものかどうかは結果を見なければわからないですが、 このような心理になる理由はわかります。 その理由を話す前に、どのようなシークエンス(順番、並び、配列、つながり)を私たちは典型的にランダム であるとみなすのでしょうか。


ランダムな現象ではラン(同じ記号の連続) の出現は珍しいことではない。しかし、人々は頻繁に物事が 交錯し平均化するものをランダムだと思い込んでいるので、 株価の上昇トレンドあるいは下落トレンドが現れると、 この偶然の結果を珍しいもの、神秘的なものとみなしてしまうのです。 結局、株価が毎日上昇していることが特別に思えたのは代表性ヒューリスティックの 働きなのです。





外挿バイアスの例


人々に過去の株価推移を見せて、その後の株価の変化を予測してもらい、 人々はその予測に基づいて売買し、 最終的な富の大きさを競うという実験が行われた。
この実験ではファンダメンタル情報(アナリストの利益予想データなど) は利用できないので、結局テクニカル情報のみに基づく投資となる。 その結果は興味深いものでした。 人々は先生から教わったわけでもないのに、 経験を積むと逆張り戦略をとるようになったのです。 株価が安定している場合、過去の平均を参考にして、 それを超えて株価が上昇すると株を売り、平均を下回ると買うという戦略を採用した。 ところがせっかくプロ並みの逆張り手法を採用することができたにもかかわらず、 価格が一貫したトレンドを示し始めると、 人々はトレンドを追うという順張りの投資戦略を採用するようになってしまった。


このように、一見してトレンドが存在するように思える場合に トレンドを追う傾向は、投資家に広くみられる 代表性バイアスです。 そして、トレンド状況でトレンドを追う作戦は、投資家に利益をもたらす はずだから、 その利益獲得によって自信過剰の一種であるコントロール幻想が生じ、 投資家はそのトレンド 追及戦略の有効性をますます強く信じるようになる。


原因と結果の関係を正しく理解すれば、 人々は結果をかなりコントロールできるようになる。 その反対に、結果を予測できない現象や意味のない 現象は私たちにとって利用価値が低い。 そのため、人間の本性はランダムな現象を毛嫌いする傾向がある。 宝くじでいえば、まったくのランダムなくじよりも、 ロト6のような自分で数字を選択できる方がよく売れるし 、なんとなく「当たりやすい」と思い込んでしまう心理があるのと 同じです。


原因と結果の間の規則的な関係を好むという人々に観察される 性質は、人類の長い進化の過程で生存に大いに役立ったと考えられる。 しかし、原子の狩猟採取生活ならばいざしらず、 現代の複雑な金融取引において、結果をコントール したいというあまりに強すぎる欲求は、私たちを ヒューリスティックの罠に誘い込むのです。





平均への回帰


体の具合が悪い時に薬を飲んだり民間療法やおまじないを施したりすると 症状が改善したという経験は誰にもあることでしょう。 いわゆる「おばあちゃんの知恵袋」というもの。しかし、 このような症状の改善は薬や民間療法が効いたと 考えるのは早とちりかもしれない。 「現に薬を飲んだら熱は下がったんだから、薬が効いたと考えるのは当然だ」 と思うでしょうが、症状の改善にはもっと深い原因が隠されている。 実は人の体温は常に一定というわけではないから、特別に何かしなくても、 高い熱の後に若干の低下がみられても不思議ではない。 実際、熱が出てから何らかの対策を講じるのは熱がピーク時の時が多い。


この熱がピークを打った後には若干の低下がみられる、という現象が 「平均への回帰」です。 そして、人が予想する際に平均への回帰の程度を過小評価したり無視したりすることを 「回帰の過小評価」という。


例えば、株主は会社が特別に良い営業成績を残した年の翌年のも、同程度異常の 営業成績を期待しがちですが、成績は統計学的には少し下がる、つまり 平均へ回帰する方が自然なことです。ということは、何期も増収増益を 続ける企業、毎年200本安打を達成するプロ野球選手などは統計法則の枠外に いることになる。


思った以上に平均への回帰が関係する現象は身近に多くある。 特に病気の時や、恋愛や仕事がうまくいかず気分が沈んでいる時は注意しないといけない。 胡散臭い薬や民間療法、祈祷や信心、スピリチュアルなど 、本当に効果があるかどうか疑わしいものを信じてしまいやすい心理状態になっている。 株価の上下を予想するときも、「株価は平均値へ回帰する」という大原則を忘れてはいけない。 永遠に高値や天井、安値や大底を維持していることは稀なのです。








ピークエンドの法則


人間の脳の仕組みとして、物事を簡略化、単純化して記憶しておくという性質があります。 恋愛心理学のピークエンドの法則 でも簡単に解説しています。人間の記憶は最高の時と最後 の状態を強く頭に留めて置く傾向があるというものです。株式投資の心理としては 高値覚え、安値覚えなどが意識されやすいラインとも言えます。


過去に経験した出来事の全体的評価は、その出来事において突出した感情と出来事の最終局面で持った 感情の平均で決まる。これがピークエンドの法則による評価の仕方です。 さらに、経験の記憶は主観によって変えられ、その時間の長さには関係ないという 特徴があり、これを時間軸の無視という。


ピークエンドの法則は、簡単に言えば「終わりよければすべてよし」 ということであり、例えば男女の恋愛では、別れ際に好印象を与えると また会いたくなる。教育では、叱るときでも最後にはフォローするのを忘れずに などと処世訓的に解釈することもできる。 言われてみれば漠然と普段感じている心理の再発見でありますが、 このような心理法則が実験によって確かめられていることは非常に興味深い。





人は誰しもハッピーエンド願望がある


上昇選好の場合、期間全体の利益、または損失が同じな場合であっても、 最後に損失で終わるケースと、利得で終わるケースでは、圧倒的に 利得で終わるパターンが好まれる。また、ピークエンドの法則では 終わりが良いことが重要だった。これは映画のストーリーでいえば、 ハッピーエンドが好まれるということであり、 結局人々の深層心理には「ハッピーエンド願望」がある。


初めに成功して徐々に損をしていくよりも、初めは失敗をし、 次第に改善したり努力して成功を獲得するストーリが大好き。 このことは株式やFX、為替トレードでの取引の仕方にも関わってくる。 具体的に言うと、「将来値上がりするだろう」 という漠然としたハッピーエンド願望が人にはある。


さらに、これは利益がある状態ではなく、損失が膨らんでいるときに陥る 心理であり、多くの投資家はこの思い込みによって塩漬け銘柄を増やしていく。 運否天賦に任せた甘い見通しのハッピーエンド願望、ポジティブ思考は、時に大失敗、大敗を 生むので注意したい。ただ、利益が乗っている状態でさらに利益を倍々へと 上積みしていくポジティブ思考、楽天的な考え方は大きく儲け大勝するために 必須のものなので、精神力のバランスは難しいものがある。








確証バイアス


確証バイアスとは、人がある仮説を立てたとき、 それを実証する証拠となるものだけを見たり聞いたり集めたりして、自分の 考え方が正しいものだと思い込んでしまう心理の作用です。


人々は起きなかったことに起きたことほど十分な注意を払わない。
別の言い方をすれば、仮説に反する情報よりも仮説に合致する情報を好む、 ということです。 これは確証バイアスと呼ばれる。人々は、自分が主張する仮説の裏付けとなる証拠を 追及しないではいられないのです。 この確証バイアスのせいで、仮説に合致するわずかな証拠を 見出しただけで、根拠の薄弱な仮説を自分の信念にしてしまっているかもしれない。


株式投資の際も、断片的な材料だけで「上がる」と思い込んでしまって 損失を拡大させてしまう。株を始めたばかりの初心者やビギナーは判断力が 未成熟なので確証バイアスの心理状況に陥ってしまう人が多い。 チャート、業績、将来性、出来高、激しい上下の動き、仕手株、 注目株として紹介されたから、 などこれらの要素一つだけではなく、 株に投資をする際は多面的な見方で様々な材料も合わせ総合的に判断しなければいけない。





この確証バイアスはどのような弊害をもたらすのでしょうか。
投資の世界での実例を一つ挙げると、確証バイアスの支配下にある人々は 、そうでない人々と比べて、市場取引の実験で損失が多い事が確かめられた。 それは、確証バイアスに罹っていると成功しなかった取引戦略、 失敗の方法に執着するので、誤った銘柄評価を続けてしまうからです。 自分の仮説を証明するような確からしい理論を脳内で勝手に作り上げてしまう。 理論株価のラインを自分で思い浮かべ、妄想で投資をしてしまっている状態ともいえる。





因果関係の判断で注意すること


まず、何かを決定するとき、バイアスの影響下にあることを常に意識することが 最も重要なことです。意識するだけではなく、 時には意識的に普段とは反対の事を試みることで、いつもとは 違う情報を得ることができるかもしれない。


次に、自分の考えている仮説を裏付ける事例以外の事柄に目を向けてみることです。 ある証券会社のアナリストは、推奨銘柄を決める前に、 自分が思っていることと逆の質問をすることを習慣にしていた。 例えば為替の円高、円安の影響で車の販売利益率が低下していると考えている 時は、経営者に販売が好調かどうか尋ねる。といった逆の質問をあえて してみる。 こういった鋭いツッコミのおかげで、このアナリストは 他のアナリストが聞けないような情報を得ることができたという。


確証バイアスから逃れるには、関係のポジティブな面だけでなく、 ネガティブな面にも焦点を当てて吟味する必要がある。 因果関係の判断では、起きなかったことは起きたことと同等の価値がある。 自分の考えに対して、先入観と過剰な自信ばかりで肯定的な材料をたくさん集めるのではなく 、否定的な意見もしっかり見聞きし、客観的で公平な判断ができることが 一流の株の上級者、専業トレーダーとして、儲けるための基本的な心構えです。








確率認識の歪み


意思決定を行う場合、数ある選択肢がどれくら魅力的な利益か、壊滅的な損失 を提供するかを知ること共に、その選択肢がどれくらい確実に実現するのかを 知ることが重要です。この物事が起きる確からしさの尺度が確率となっている。


学校で習う確率は客観的な概念ですが、日常で 使う確率は大半が主観的なものです。 主観的な確立とは、ある事象あるいは命題について特定個人が抱く純粋に 主観的な確信、つまり信念の程度。客観的な確立では、 繰り返しのない出来事、 例えば革命の確率を定めることはできない。 しかし、主観的確率を用いることで、 革命の確率は「革命の起こりやすさ」といった 不確実な出来事に対する個人の信念の程度で定められるようになったのです。


主観的確率は特定個人が抱く信念の程度であるから、 例えば良い事が自分に実現する確率を過大に見積もったり、 割事が自分に降りかかる確率を過小に見積もったりすることがあるとしても理解できる。 本来歪みようがない客観的な確立であっても、私たちの心理はそれを 捻じ曲げて認識することが明らかにされている。





確実性効果


同じ1%の確率でも、非常に低い場合、 中くらいの確率の場合、そして不確実から確実になる場合とでは、 私たちの評価は異なる。 特に利益獲得の可能性が100%確実になることを 非常に高く評価する傾向があり、 これは「確実性効果」と呼ばれている。


さらにこの効果をリスクの側から見れば、 損失を被る確率がゼロになるのを高く評価することと同じであるから、 この場合は「ゼロリスク効果」と呼ばれる。 50%の確率で損するものを100万円かけて49%損するように することは無駄だと感じるのに、1%から0%にする場合は100万円かける 価値があると思う。100回のうち99回は大丈夫でも、残る1回が 大きな損失につながると思うとなぜか気分が晴れないという経験は誰にでもある。 少ない確率とはいえ体に良くない生レバーを食べるような心境です。 この心配をゼロにできるのは非常に精神衛生上良い。 だから期待値以上にお金を払ってしまうのです。





確率の歪みとリスクに対する態度


確率が五分五分である二つの選択肢がある場合、 選んだ選択肢の確率は主観的には42%にしかならい。 そうすると、先着者は確率の合計が1であることは知っているから、 選択者にとって選ばなかった選択肢の確率は58%になってしまう。 これは実際に確率が変化しているわけではなく、漠然と自分が 選ばなかった方の選択肢の方が確率が大きく感じる。


逆に今度は選ばなかった方の選択肢を選ぶことにすると、 同様に心理の変化が起きる。 結局、常に選ばない方の選択肢の確率が高いように思えるので、 なかなか決定することができない。 このようなメカニズムで、確率認識の歪みは決定麻痺を引き起こす。





確率認識を誤らせる利用可能性


人にとって、鮮烈なもの、具体的なもの、頭に浮かびやすいものは 利用可能性が高く、確率の推定を誤らせる危険がある。 慣れや親しみやすさといった親近性も利用可能性を高める。 利用可能性をもう少し詳しく分類すると次のような要素がある。








検索容易性


判断のために事例情報を収集するような場合、特に検索しやすい事例だけを 自分の記憶から収集してしまう。 注目されている仕手株の株価チャートを眺めていると、 そのうち急上昇する確率が高いと思ってしまうことがある。





具体性


具体的で鮮明な情報は、統計などのように抽象的で興味を惹かない情報よりも、 鮮明に記憶され、思い出すのも容易になる。





親近性


慣れ親しんでいたり親しみやすかったりする方が思い出しやすい。
愛用の道具、相棒、パートナーなど。





鮮烈さ


鮮烈な印象を与える情報は記憶から検索されやすい。 例えば感情豊か、興奮、地理的な特徴。 簡単に言えば遊園地やカーニバル、お祭りのようなインパクトのあるもの。





想起容易性


頻度を判断するとき、特に思い出しやすい事例は頻度が多いと判断される。 熟知度が高い、よく目にする、よく知っている、簡単に想像できる、 トラウマ、など想起しやすいもの。





これらの要素は確率推定を歪める原因になる。
自分が詳しいものやよく知っているもの、具体的に思い出しやすいものなど、 自分の思考回路と距離が近いものを考えると、ひいき目に見てしまう 心理が備わっている。これは株の銘柄の選び方も同じです。 よく知っている大企業だから良いに決まっている。 自分が使う商品だから業績はたぶん良いだろう。 など主観的な判断が確率を捻じ曲げてしまっている。 このことをよく考えて客観的な視点から投資銘柄を選びましょう。 株式投資において感情論はほとんどデメリットとなりメリットが少ない。 機械的な確率論の重要性を理解しておこう。








自信過剰と自己正当化


自分が思っている程自分は賢くない。 「自信過剰」な人物が常に傲慢だと限らない。 つまり謙虚で買い物が下手だという自覚があっても、 本当は自覚しているよりさらに下手なのかもしれない。


自分の信念や判断に客観的な証拠が示す以上の 自信を抱くことが自信過剰という。 その自信には根拠がないのだから、 自信過剰な人は株式投資の世界では失敗することも多い。 本来、人は失敗から様々なことを学習しなければいけない。 原因と結果の繋がりの認識、各々の選択肢の確からしさの推定、 最も好ましい選択肢の選択といった 意思決定プロセスを見直し、必要な修正を加えないと、 同じ過ちを繰り返す。


しかし、すでに自分は有能だと思っている自信過剰な人は自分の 意思決定プロセスを修正しようとは考えずに、過去の行動にマッチするように考え方 や態度の方を修正してしまう。これが認知的不協和に代表される自己正当化の心理です。





コントロール幻想


双六などでサイコロを振るときに、 希望の目が出るように投げ方を工夫した経験は誰もがある。 人生ゲームでもルーレットを回すとき、なんとなく「7が出ろ」など 神様に祈ってから回すといったことです。 プロは自分が偶然をコントロールできるなんらかの能力を 持っていると信じているらしい。 サイコロの目で奇数の場合はゆっくり投げる、念を込めるなど。 確かに一部の手練れであれば、サイの目を自由にできるノウハウを持ち合わせているかもしれませんが、 一般人のほとんどが、 「自分の手によって物事の確率を操作できる」という思い込み 、すなわちコントロール幻想を持っている。


宝くじを買う時、当たりくじが沢山出た売り場を選んで、そこから購入すると 決めている人、完全にランダムな宝くじよりも、ロト6など 自分で数字を選択できる形式の方が当たる可能性が高まると感じる人など。 自分の行動を変化させたからといって確率そのものが変わるわけではないけれど、 自分がしたことで、客観的な成功確率は変化しないものの、 主観的な成功確率を高く見積もるのが「コントロール幻想」の特徴です。 これは自分の信念や判断に根拠のない非科学的な自信を抱くことだから、 自信過剰に該当する。 いわゆる「ジンクスを気にする」とか「ゲンを担ぐ」といった行動の 多くがコントロール幻想にあたる。





コントロール幻想はある条件が原因となって引き起こされる心理です。
それらには以下のようなファクターがあります。


競争要因


相手のだらしない態度やおどおどしている態度などによって 、相手を過小評価したり見下し、甘く見ている時。油断。





親近性要因


ありふれた道具を使ったとき。
見慣れない絵柄のトランプよりも見慣れた絵柄の方が賭け金が大胆になる。





選択要因


自分でくじや株の銘柄を選べるとき。





積極的関与要因


数字を選ぶ、売買のタイミングを選べる、ルーレットに玉を投げ入れるなど。
賭けの過程に関与できるとき。





実行順序要因


お金をベットした後でサイコロや抽選が行われるとき。





結果の順序要因


最終的な結果は人並みな平均値に落ち着くとしても
前半にラッキー、幸運や好調な結果が得られているとき。





連続する好結果要因


自分に有利な結果が連続するように思える時。
毎日株価指数や自分がチェックしている注目銘柄が上昇するのを見る時など。





情報要員


ライバルやほかの人よりも自分が多くの情報を持っていると信じているとき。





過信要因


事前に自分の予測がかなり正確であると聞かされたとき。





思考時間要因


事前に長く考えさせたとき。(サンクコスト効果)





ネット投資家は、一連の取引をパソコン画面で完結できることから、 全能感を深めやすく、 そのためにマネーゲームにのめりこみがちになる。 しかし、これはコントロール幻想の、使い慣れたパソコンを駆使するという 親近性要因、自分がすべてを選択するという選択要因、 賭けの過程に関与しているという積極的関与要因が影響していると思われる。 適度な自信は重要なものかもしれませんが、 驕り、油断していると足元をすくわれるのは人生も株でも同じ心理です。


ネット投資家が稼げない心理的な理由


ネット投資家君(といっても最近の主流ですが)は自宅のパソコンを 使って株式投資の日計り商いを行うデイトレーダーである。 高校生はまだしも、大学生や専門学校生の場合、 有り余る時間があるので、ヒマな日は 朝9時からパソコンのある部屋に引きこもり、 お昼ごはんの三十分休憩を除いて、午後3時までトレードに没頭する。
インターネット回線は光ファイバーなど、最近では十分なスピードが確保され、 板情報(現在の買い、売り注文の値段と注文株数の表示)の閲覧、逆指値( 株価が指定した金額まで下がったら売り、指定した金額まで上がったら買いとする方法) などプロの証券ディーラーが使うようなナンピン買い、ピラミッティング、損切り など高度な手法も可能。まさにプロ並みの装備を整えているのがネット君の自慢です。


また、大抵のネット投資家は短期売買、デイトレードが大好きです。
投資対象の企業や会社の財務データや経営状況の情報もネット経由で手に入るけれど、 そこまで重要視していない。 専門用語で言えば、ファンダメンタルよりもテクニカル分析を主流としている。 オンライン売買の判断は主としてチャートや陽線、陰線、盛り上がりや激しい動きなど から将来を読む自己流と、市場や某掲示板(2ch、yahoo掲示板、みんかぶ等)に飛び交う噂 や早耳情報に頼ることが多い。 休みの日はチャートの分析とネットからの裏話などを情報収取、 そして億単位のお金を儲けたデイトレーダーの体験談や武勇伝などを 本や雑誌で見て、自分も稼ぎたいと意気込む。


初めは冷静で慎重な態度で臨みさらにビギナーズラック もあってか取引を始めたころは結構儲かっていたが、 最近のパフォーマンスはふるわず、 赤字続きとなってしまっている。 そして負けが込むと銘柄を損切できず塩漬けしてしまう。 初期資金、資本が少ないデイトレーダーにとって 流動性の枯渇は大変な問題である。 しかし、身動きがとれないのでどうしようもなく、泣く泣く市場から退場してしまう 、あるいは塩漬けのまま冬眠投資法へと突入するという 結末を迎える。








ネット投資家が稼げない原因


苦境に陥ったネット投資家はまず心理的な側面を勉強してみましょう。
とある先人の言葉にこのような厳しいものがあるので紹介しておきます。 「デイトレーダーなどといって、 大の大人が一日中部屋に引きこもってニート同然に 売ったり買ったりするのは勝手だが、 続くわけがない。相場には魔物が棲むと言うように いつの時代にもある熱病のようなものだ」と。
デイトレーダーで稼ごうとするのは夢がありますが、 生き残れるのは100人に1人、それ以下だということは心に留めておく必要がある。
ネット投資家がなかなか儲からない理由は以下の通り。








ゼロサムゲームの認識


まず株式投資に参加する際は、相場は「ゼロサムゲーム」 であることをしっかり認識することが大切です。 日計り商いであるデイトレードは基本的にゼロサムゲームであるから 誰かをカモにしない限り利益を上げることはできない
中長期、スイングトレードも結局は誰かにババを掴ませるゼロサムゲームです。


株を始める時、誰もが初めは自信過剰で「自分なら勝てるだろう」と思っている。 しかし、実際は8割の個人投資家は損をするようにできている。
ポーカーでは「テーブルを見回して、誰がカモにされているかわからない時は、 たぶん自分がカモられている」という法則がある。 ゼロサムゲームでは必ず勝ち組と負け組、勝者と敗者が生まれる。 これらのことを忘れないで「負ける可能性がある」と リスクもリターンもある認識を持ち、用心深く謙虚な態度で相場に臨もう。





コントロール幻想


気の弱い人でも、車を運転すると車を支配したような気分になり、 気が大きくなり性格が豹変してしまうことがある。 これと同様に、ネット取引では、使い慣れたパソコン一つで 簡単にオンライントレードができるため、全能感を深め取引にのめりこみやすくなる。 人間は心理的に油断している時、最も足元をすくわれやすい。
株式相場はちっぽけな個人投資家ではどうあがいても操作できない。 大株主、会社の社長や役員、オイルマネーや富裕層が融資しているヘッジファンド、投資会社、銀行、証券、保険会社や年金資金等、 規模の大きなうねりや流れ、 魔物が棲み相場を操縦し、コントロールしていることを理解しておこう。





知識幻想


株式投資は知識が多ければ将来が予想、予測できるなんて単純なものではなく、 理論的にはどうと言えても、結果は常に不確実であり絶対は存在しない。 しかし、さまざまな情報、会社の売上、利益、財務データ、アナリストレポート、推奨銘柄 レポート、掲示板の噂話、評判などをネットから得ているうちに、 自分の知識量の多さから、自信を深める個人投資家が多い。 しかし、実際は知識や情報の量に収入や稼ぎ、利益の幅が比例するわけではなく、 思ったよりも正確性や予想の精度は向上しないことが多い。これが「知識幻想」と呼ばれる 自信過剰の心理の一種です。





サンクコスト効果


多くの時間をデータ収集や株の勉強に費やす投資家は、 それだけ自分の時間と労力をつぎ込んだから、それらの情報は必ず役立つはずだと考えてしまう。 心理学用語で言えば、自我関与の割合が増えている状態である。 それだけのコストを掛けたのだから、元を取りたいと思うのがサンクコスト効果です。 一つの銘柄への執着や損切りできない塩漬け銘柄はこの心理によって生まれます。





認知的不協和


自分がした行動が割に合わないと脳が混乱してしまう。
だから、自分がしたことは正しいと思う込む傾向が人間にはある。
例としては、恋愛でダメ男やヒモ男の彼氏にハマってしまう女性の心理です。
普通の彼氏やカッコイイ彼氏の場合、カッコイイ、優しいから付き合っている と理論的に考えられますが、実は彼氏の事があまり好みのタイプではない場合、 デートをしたという事実を後悔したくないために、 「顔は良くないけど性格に惹かれる」など 自分で勝手に付き合う動機を作ってしまいます。


いつも褒め合っているカップルよりも、普段はツンツンしていて冷たいけれど たまに優しい方が認知的不協和により、依存度は高まります。 これが強烈な自己暗示となり、普通で無難なイケメンと交際するときよりも、 少し悪条件やクセがある相手と付き合う方が深くのめりこみ、強く依存してしまうというわけです。





自己責任バイアス


トレードがうまくいった場合は自分の能力によるものだと思い、
失敗した場合は運のせいにすれば自尊心やプライドは守られる。
この「自己責任バイアス」のように原因と結果の因果関係を都合の良いように 捻じ曲げて解釈してしまうと いつまでもたっても反省や改善ができず成長しない。





小さい確率の過大評価


自分の理論に固執していると、少しの好材料を見つけただけで、 それがとんでもなく凄いことで株価をうなぎ上りに上昇させる要素に見えてくる。 「チャートが上昇トレンドで過去にこの形から急上昇した」 というただそれ一点のみで、小さい確率を過大評価してしまいドツボにハマる。 宝くじを買う人は皆この心理に陥っている。 平均リターンは必ずマイナスになるにも関わらず、 わずか数%の小さな確率を苦も無く追い続ける。 視野を広げて客観的に分析できる冷静さが必要です。 ただ、確率や理論的な分析だけでは測れない程の株価の急騰や急落が 起こることがあるのも間違いありません。 しかし、そうそう予測できるものではないので このような銘柄を狙うとなかなかパフォーマンスは安定しないものです。








デイトレードで勝ちやすくする方法


デイトレードの勝率アップには、資金管理と精神コントロールにコツがある。
必勝法とは言わないまでも、勝率を高める方法はある程度わかっている。
それこそ一般論であり、どこでも言われているような手法なのですが、 いざ自分のお金で株を買うとなると、様々なバイアスにより、 最適な投資戦略が実行できなくなってしまう。 そんな心の弱さを克服し、テクニックを身につけた時、デイトレードで勝ち、生計を立てられる少数派の一員になることができる。





投資戦略変更の容易さ


株式市場を操っている裏の勢力、仕手株でいうところの本尊は 株数が膨大なので、長期的な視点で上昇トレンドを形成させるか、あるいは劇的な急騰や急落のドラマを 演出させなければ、すべての持ち株を処分するのは大変です。 簡単な言葉で言ってしまえば、「この投資戦略は失敗かもしれない」と いう結論に及んだとしても、瞬時に持ち株を処分すると大損してしまうことになる。 少しずつ株を売れば、ダメージは少ないものの、出来高の増加が起こり 相場の転換点になってしまうこともある。


このような機関投資家ならではの動きの鈍さ というデメリット、欠点があるのに対して、個人投資家はこれとは全く逆の スピードがあります。 「これはダメそうだ」と思えばすぐさま売り抜け逃げることができる。 デイトレードで資産を増やしたい、お金を稼ぎたいと考えるなら この長所を使わない手はない。決断と行動は早い方が有利、何事も先手必勝です。





勝ち逃げ


必勝法で一番重要なテクニックは勝ち逃げをすることです。
デイトレードは本質的にはゼロサムゲームだから、 長い時間続けていれば、儲けは平均であるゼロに近づいていく。 しかし、コストを加味すれば損益は当然マイナスになってしまうので、 儲けている時に勝ち逃げをするのが賢いトレード方法です。 一日で3%〜5%も上昇、ゲインすれば儲けもので、 コツコツとコンスタントに利益を出して、持越しの リスクを減らすことが大切です。 損失を抑えながら頻繁に売買をすることで、いつかは 巡ってくる大勝やストップ高の連荘チャンスに遭遇できる。


勝ち逃げは個人投資家だからできることで、機関投資家であれば その商売を諦めて撤退する場合しか行使できないオプションです。 だから、いつでも撤退、勝ち逃げできる個人投資家は この特権を十二分に活用するべきなのです。 ただし、日計り売買はうまくいくとは限らず、欲をかいて再び 同じ銘柄で儲けようと思うと、せっかく積み上げた儲けを失ってしまうこともあるので 注意したい。





損切り


零細な個人企業であるデイトレーダーにとっては、 資金が枯渇すること、資金不足、流動性が無くなる状態はマーケットからの 強制退場を意味する。だから、大損をしないようにすることが 最重要課題です。 そのためには危機を察知したら「もしかしたら上がるかも」なんて 甘い考えは捨てて早め早めに損切するのが効果的なコツです。


しかし、心理的には人は損失を確定させるのが大嫌い。
損失先送り効果という強力な心理のバイアスがあるので、 なかなか自分の失敗を認めたがらない。 損している状態で株を売却することは、精神的には大きな負担で後悔を生む。 だから、なかなか損切が実行できない。 そんな時は、自分の弱い心に頼るのではなく、機械的な売買に徹することが成功への近道です。 つまり、ロスカットルールを設けて、 その地点になったら有無を言わず損切してその後はしばらく様子を見るのです。


その後さらに二番底、三番底を確認してから相場に参加、参戦することも可能になります。 例えば、5%下落したら強制的にロスカット、いわゆる損切をしておけば、 他の有力銘柄に投資できます。資金力が少ない 個人投資家は下落した後、再度反転して上昇するのを待っている余裕はあまりありません。 大口投資家とは違い、小口であるが故に「機敏に動ける」という大きなアドバンテージを利用しない手はないのです。





仕手株や過熱銘柄の飛び乗り飛び降り


デイトレーダーなら誰もが夢見るのが、お祭り銘柄(過熱した市場)での 神業的な飛び乗り飛び降りで莫大な利益を出す手法でしょう。
デイトレーダーが生き残るためには、なんだかんだ言って、 この過熱を察知する鋭い勘が必要です。 仕手株や過熱銘柄は一時的なバブルであり、いずれ そのバブルははじけます。 それを見抜いた上でそれを利用できる自信があるのなら、 参加してもよいでしょう。 ただし、投資家すべてが勝つわけではなく、大損してしまうこともある。 勝つ投資家は常に少数派です。 誰もが安心、安堵している時に売り抜け、疑心暗鬼で参加するかどうか 迷っている時にこそ、先頭切って突っ込むという瞬発力と度胸、肝が必要です。


仕掛ける時は少数派で、ポジションを保持する間は多数派、 再びポジションを手仕舞いする時は少数派であるのが理想的です。 したがって、人より少し早く飛び乗り、人より少し早く飛び降りることを心がけましょう。


ただ、ネット掲示板や口コミ情報は熱心に読んでいても、 信頼できる情報あまりなく、優位性があるとは思えません。しかも、 買った場合は自信過剰の程度は深まるからなおさら勝ち続けるのは難しくなる。 決断は人に頼るのではなく、自分の意志や判断を頼りにしなければ市場では生き残れません。








デイトレーダーの最大の強みは速さにこそあります。
せっかくザラ場の板を眺めて監視しているのであれば、 上下のチャンスを掴まなければ時間が勿体ない。 初動を察知してすぐさま飛び乗れるのもデイトレーダーの醍醐味です。 かといってせかせか足掻いても利益が少ないのも事実。 デイトレーダーにしかできない、早逃げは勝率を引き上げる必勝法に近いものとなります。


確かに株を持越しすることで得られる2倍3倍、10倍(テンバーガー)などの利幅のうまみこそが投資の基本であり大王道ですが、 上昇トレンドであっても下がる瞬間はあります。 このような部分を回避できるのがデイトレーダーの強み。 デイトレーダーとして生き残りたい、勝ち続けたいと考えるなら、 いかに速く動けるかが勝利のカギです。 ただ、やたらめったら買い付けるのではなく、狙い澄ました瞬間に エントリーし、利益確定ポイントで売り払うという「慎重な速さ」が求められます。
これらのポイントはFX、為替トレードでも使えるものなので、 自分の頭の中で整理してよく理解しておきましょう。広い意味では ビジネスや人生哲学にも通ずる部分もあります。








自己正当化−行動による心理の変化−


自分の中に確固たる信念を持っている人がいる。
好き嫌いの好みや仕事のやり方、人間関係、恋愛でも同様に、自分の絶対曲げられない 価値観、宗教や趣味、好みのタイプなどがある。
しかし、一見強固に思えるこれらの思想は、案外簡単な きっかけによって変化してしまう。 自分の考えが常に間違っているとは言えないけれど、 どこかおかしいところがないか検証してみると、 思わぬ自己矛盾を発見するかもしれない。





一貫性幻想


どんな壁にぶち当たろうともめげずに自らの信念を着実に実行していく 人を称えて「信念の人」というように、普通、信念が行動に影響すると考えられている。
しかし、この信念が行動した後で変化することが起こりうる。
これは、多くの場合自分のした行動を正当化する方向へ 心理が変化するため、自己正当化に繋がりやすい。 例えば、携帯電話を購入する際、チラシ広告を 一番熱心に読むのは、その商品を買おうとしている顧客よりも、 その商品を既に購入した顧客だったという調査結果がある。 既に自分が実行した行動はどうしようもないので、 その選択が正しかったかどうかを、その商品を褒めている 広告を見て判断し、不安を解消しようとするのです。
この時感じた一抹の不安が「認知的不協和」と呼ばれるものです。 これは一貫性とは対極に位置する心理で、 心理的に調和しない2つの考えを同時に持つことです。 人間は矛盾していることを感じると、本能でこれを 解消しようと努めます。 この時、どちらの思考に偏るかでその人の意思決定がなされます。





私たちは意思決定において論理的でありたいと願っているので、一貫性を重視する。 一貫性のない場当たり的な対応は人々の信頼を損なうだろうし、 予測を行う時も複数のデータに一貫した傾向が見られれば、 その傾向は別の状況でも発生しやすいと判断する。


しかし、一般的に複数の相互に依存するデータに基づいて予測をする場合は、 データの一貫性は情報の重複を意味することが多く必ずしも予測の確かさを示す証拠とはならない。 一貫性のあるデータは多くの場合相互に関連があるため、当然に相関が高いからです。 これは確証バイアスと関係がある。 自分が立てた仮説を支持する証拠を集めずにはいられないという 確証バイアスの心理下では、追加される情報は重複的なので、 仮説に対する不当な自信を誘発してします。


例えば株の例で簡単に説明すると、「上昇トレンドに転換した銘柄は必ず上がる」 という考えがあると、一貫性幻想によって、 チャートが右肩上がりに見える銘柄は全て登り調子で、株価は将来有望で 今後はうなぎ上りだと思ってしまう。 さらに理論に一貫性を持たせるために、確証バイアスによる類似の上昇トレンド状態にある 銘柄の株価データを集めて、「やっぱりそうだ」と自分の理論に自信を持つ。
しかし、実際それだけで儲かれば誰でも億万長者になれてしまう。 物事には必ず例外があり、 株価の予想であっても容易ではない。





この項目で理解しておきたいのは、自分の信念や考え方は不確かなものであり、 自分が集めた客観的なデータでさえも正しいとは限らないということです。 大儲けするためには、ある種の楽観的思考は必要ですが、 それだけリスクも大きくなるので収支に安定感が無くなってしまいます。 物事をどこまでも疑っていたら切りが無いですが、 100%何かを信じ切ってしまうことよりはリスクが少なく大けがを しないで済むことでしょう。株での稼ぎを安定させるためにも 、自分の精神が正常なのか異常なのか常にチェックしておきたいものです。








行動に導かれた態度の変化の例


自分の事を有能だと思っている人も無能だと思っている人も、 自己評価に関係なく、行動を重視する心理の傾向がある。 自分の考えと行動の間に食い違いや矛盾が生じたときに、 自分の過去の行動にマッチするように態度を修正させてしまう。 このように行動したことで、思考が変化したり強化されたりすることを 「行動に導かれた態度の変化」という。 これらの自己正当化バイアスには様々な種類のものがある。





後知恵


「後知恵」は、事前には専門家も予想できなかった出来事が、 後から振り返ってみれば必然的に起こったように見えることを意味する。 起きてしまった結果を変えることはできないけれど、 自分は前から知っていたと考えることは、自尊心、プライドを保つことに 役立つ心理。


わかりやすいのは、「あの銘柄は上がるかもしれないけどわからないから購入は控えよう」 と思ってしばらく日にちが立つと値がグングン上昇していく。 この時、「やっぱり上がったか」と思うのは後知恵の一種です。 後から結果を想定通りだったと強がって言うのは簡単だけど、 実際に行動には移せなかったことを考えれば、反省すべきところ。 後知恵によって過剰な自信をつけてしまうと、 株や投資は予測しやすいという錯覚を起こして大損の原因になりかねない。





合理化


「合理化」は、目的や欲求が達成できなかったとき、理想と現実のギャップを 自分に都合の良い理由で埋め合わせようとする心理の働きです。 目的は果たせなくてもこうすることで深く落ち込まずに済みます。 合理化は自分の意志決定を美化して正しいものだと思い込む手助けになります。 イソップ物語のキツネが取れないブドウを「あれは酸っぱいものだ」 と思ったというのはこの典型的な例です。





サンクコスト効果


高級なブランド品を購入した人が、その商品の価値を 十二分に評価するようになるというのは、もちろん 高品質で希望に沿ったものであることが主な理由ですが、 高いお金を払ったという ことも理由の一つです。 人は自分が払ったコストが大きいければ大きい程、 コストを払った対象に価値があると思い込みたがる。 すなわちサンクコスト効果が働きます。


好きでもない男とデートした女は、自分の行動の失敗を認めたくないがために 相手の男にべた惚れしてしまうことがあります。
また、自分が持っている物には愛着がわき、価値があるとひいき目に見てしまうことを 所有効果と呼び、これも サンクコスト効果の一種です。
一度買った株が後で失敗だとわかってもなかなか損切り、ロスカットで手放せないのは このようなサンクコスト効果が心理の壁となっているからです。





確証バイアス


確証バイアスは前の章でも詳しく説明してありますが、 人々が自分の考えに合うような証拠を探す、 あるいは自分の考えに合うように証拠を解釈する傾向です。 これは「 自分のとった行動に合う証拠を探す」と読み替えることができる。
人々は、自分のとった行動と一致しない事実に注意深い吟味を 加え、それらを偶然やデータ収集の誤りのせいにする。 しかも、 一貫性幻想のために追加される情報は重複的なので、 ますます自分のとった行動は正当化される。


もし、自分の信念が正しい方向を目指していれば、 大成功を収めることができますが、 誤った方向へ突き進んでしまうような場合は、大けがをしてしまうことが ある。一流の株式トレーダー、相場師になりたいなら、 常に客観的で多面的な視点でものを見れる思考の柔軟性を身につけておきたいものです。








「無知の知」「失敗は成功の母」など、自分の行動を 反省して改善することで自己の成長が促せる。 各種の自己正当化バイアスによって、自分の行動を正当化し、「自分は正しい、悪くない」 という気持ちばかりになると、傲慢でいい加減な人間になってしまう。 普通の生活をする上ではそれでも大丈夫かもしれませんが、 株式投資の世界ではこのような正当化はリスクを増大させ危険です。 自分の悪かった点は運や環境のせいにせず、自分の能力が至らなかったと 素直に認めることで、初心者から中級者、上級者へとステップアップすることができます。








群集心理、同調行動


金融市場では様々な種類の同調行動がみられる。 最も簡単な例では「株価が上昇したから買ってみよう」という心理の動きがあります。 一瞬だけ急騰した仕手株を掴んで大損してしまうことがあるので、 最も注意しておきたいものです。
これらの同調行動は主に4つにまとめて分類できる。


1つ目は「情報のカスケード」。簡単に言えばドミノ効果です。
前の人の決定を観察した人が、それに倣って行動することです。 ここで重要なのは前の人の考え方や情報に同調するのではなく、 行動を真似するという点です。
2つ目は、「評判への同調」で、評価の高いリーダーに同調する行動です。
3つ目は、「調査のための情報」であり、アナリストの群集行動が該当する。
証券アナリストは自ら発信する情報の独自性が大切だけど、 それだけでなく、
自分の情報に他人がリアクションを起こしてくれないと 情報に価値が出ない。
独自性発揮と同調の兼ね合い、バランスが大事になる。
4つ目は、「観察された同調行動」です。 これはポジティブフィードバック、ネガティブフィードバックのことで、 価格が上昇すると証券を購入し、価格が下落するとその証券を売却する投資行動であり、 バブルを発生させる原因となる心理です。








情報のカスケード


自分の目の前にいる人が何らかの有益な情報を持っていたかどうかは 問題ではなく、後に続く人が自分が保有している情報に頼らないで、 最初の人の行動だけを観察して追従するのが情報のカスケードです。 ザラ場を眺めていたら急に次々買い注文が入り、5%10%と値上がりしていくのを 眺めて自分も釣られて買ってしまう行動。この有様が滝が端から順々に滝壺に向かって流れ 落ちる様子に似ているので、情報のカスケードと呼ぶ。





口コミの影響力


とある大学教授が行った米国の個人投資家に対する調査で、
最近株を購入した投資家の大部分が個人間の直接コミュニケーションを 通じてその銘柄を購入したことが明らかになったという。 ねずみ講や詐欺に引っかかる人たちも、知人の紹介というケースが圧倒的に多い。
口コミの影響力は明らかで、例えば友人が「この新商品は凄く使いやすい」 という言葉を聞けば、機会があれば使ってみようという気になる。
それほど口コミは心理に大きな影響を及ぼしている。


口コミは会話やメール、あるいはネットの掲示板であっても効果を及ぼす。
どんなに胡散臭い情報源であっても、数多くの人が繰り返し似たような発言を していると、それが真実だと思ってしまう。 これは一種の自己強化プロセス、マインドコントロールといっても良い。 さらに口コミは抽象的ではなく、具体的なものが多いので、 アクセシビリティが高い鮮明な情報だと判断され強く記憶される。
口コミの情報源は、想像以上に人の心理にインパクトを与える。 yahoo掲示板やみん株、2ch(2ちゃんねる)の株式、市況、個別銘柄板など には噂話やインサイダー情報のようなものがあるが、 全てを鵜呑みにすることなく、情報源が確かなものかどうか考えましょう。 人の言うとおりに動いて成功することは稀だと思います。





群集行動の心理が高値掴みを引き起こす


上昇相場を追いかける行動がなかなかうまくいかない理由が2つある。
第一は会社の業績が最高になるのは、その戦略がうまくいかなくなる直前である場合が多い事。 第二の理由は、列の先頭にいるのでなければ、 そこの株や債券の価格は急上昇した後であるケースが多い。 人気の価格急騰銘柄に頻繁に乗り換える行動は高値掴みになるし、 せっかくこれから本格的な上昇が始まるという銘柄を手放すことに繋がりやすい。 群集に混じって投資しても、集団の最後尾についてしまっては 高値を掴まされ、カモ同然になってしまう。


このような愚かな行為をしないためには、 他人の情報を参考にするのは構わないけれど、他人の決定を無批判に受け入れることを やめる必要がある。 そして、投資の原点に立ち返って、自分の考えに基づく銘柄選択をするべきということになる。





ノイズトレーダーが市場を動かす


実際には情報を持っていないにもかかわらず、情報を持っているかのように 行動する投資家、あるいは占いや当てずっぽうの科学的裏付けのない 情報を信頼できる情報だと信じて行動する投資家の事を ノイズトレーダーという。 その反対に、自分の合理的な情報に基づいて行動する投資家はトレーダー と呼ばれる。 群集行動の心理に従って行動してしまう投資家は 他人の決定を無批判に鵜呑みにして受け入れてしまうから、 正真正銘のノイズトレーダーと言える。


ノイズトレーダーが市場に存在すると、 ノイズトレーダー達は、チャートの激しい上下や価格ばかりを 追いかけているから、 理論価値、理論株価、ファンダメンタルに基づく価値からかなり 乖離する場合が生じる。
本来、この市場価格と理論価格の差は合理的な投資家にとって儲けるチャンスになる。 理論価格よりも市場価格が割高であれば空売りし、割安であれば、証券を購入すれば 将来的に利ざやを取ることができる。 ところが、ノイズトレーダーが市場で優勢になると、理論価格と市場価格の 差は縮まるどころかどこまで拡大していく。 簡単に言えば、バブルのようなことが起きる。 いつはじけるかもわからないものが、ノイズトレーダー、いわゆる投機家達に よって無制限に理論価格から株価や値段が乖離していく。


先物取引や原油、金、不動産でもこのようなことは起こりうる。 仕手株なども、本尊と呼ばれる株価を操作している筋が売り抜けた後に、 株価が急上昇するのを目の当たりにしてさらに株を買いたくなる群集心理 が働き、青天井で株価が上がり続けることがある。 話題性がある株の銘柄はノイズトレーダーが集まりやすく、 株価を予測するのが非常に難しくなる。 このような株を長期的にホールドしていると10倍20倍もの 大幅な利益を稼ぐことが可能な場合も起こりうる。 ただ、それだけの強靭な精神力を持っている人はほとんどおらず、 大抵の投資家は小さな利食い、利益確定をして満足してしまうのがほとんどです。








自分より我慢している人がいると心が安らぐ


株価を塩漬けにしたまま必死に抱え込んでしまう人がいる。
これは8割の投資家が行ってしまう愚かな投資行動と言われています。
確かに中には持ち続けていれば上昇する株があってもおかしくありません。
しかし、明らかに下落トレンド、下降基調でなおかつ業績も 上向く見込みがない会社というのが存在します。 それすらも損切りすることができないのは、後悔したくないという 気持ちがあるからというのは損失回避の部分で既に書いています。


この「絶対損切したくない」という気持ちを強化させるのが、
自分よりも我慢強く耐えている人がいる場合です。
現在は株の銘柄毎にネット上の掲示板があり、そこで意見交換をすることができます。 そこでは、「含み益ウマウマ」「利益確定した」「大損してる」「買った途端下がった」 など嘘か真か真偽が定かではないものの、誰かの声が確認できます。 そこで、自分よりも損をしている人がホールドして 悲鳴を上げている現状を見ると、「自分よりも苦しんでいる人がいるから もっと頑張れる」というような気持ちになります。 だからさらに損失を先送りしたがる傾向が強まります。


将来有望な銘柄は持ち続けて放置し、睡眠投資法で値上がりを待つのも上策ですが、 明らかに成長する要素が無い会社の株は、すぐさま捨ててしまいましょう。 風水でも言われていますが、古いものを置いておくと新しいものが置けません。 気の流れが止まり、運気が落ちる原因になります。 金も株も天下の回りもの、できるだけ無駄なく流れるような株のトレード、投資ができるようになりたいものです。








株を買うタイミング











株を売るタイミング


役に立つ株式相場の格言集


株や相場は数字や理論よりも、先人の哲学を勉強した方が勝ち組に近づくことができます。 ウォーレンバフェット、本間宗久(酒田五法の考案者)、BNFなどが有名で 様々な名言を残しています。小手先の投資手法やテクニックを覚えるよりも、 まずは哲学、心を磨くことから始めましょう。格言には相場の本質が よく表れています。








強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福のうちに消えて行く


相場師は常に大衆と逆の動きをします。個人投資家が総悲観して 株を売っている時に、逆張りで買い玉を集め、目標株数を集めてチャートもちょうど良い具合に なると高値を買い叩き始め上昇させます。「ここまで来たらもう高い」と 個人投資家が思えば、その株をさらに集め価格を吊り上げる。 個人投資家が楽観的になりはじめ、高値でも株を買うようになると売買高が増えて 天井傾向が出始めます。そこからさらにもう一段持ち上げて、 筋は全ての持ち株を売り抜けます。個人投資家が少しの利益で幸福を感じている瞬間 にはもう相場は終わっているという仕組みです。 株を買うのはスタートダッシュで人より一歩早く動かなければいけません。 「上昇トレンドに転換しそうだけど上がるかどうか難しい」 この迷いが生じているタイミングが最も買える瞬間です。 個人投資家の迷いが消えて総楽観となった時は、機関投資家や大物筋は既に手仕舞いしているのです。 株はカモ探しのゲームと言えます。 8割方負けている個人投資家に同調してしまうと痛い目に遭うのが法則、セオリーあり。勝つためには常に少数派であることが鉄則です。








人の行く裏に道あり花の山


これは株だけではなく人生のあらゆる事柄に言えることです。
恋愛の相手を選ぶ時、できるだけ競争相手がいない人を探せばすんなり恋人にできます。 ビジネスでは、誰もやっていないことをやれば「あっ」と驚かせることができ注目される。
株に言い換えれば、誰も行かないような裏道、誰も買わないような 株を買う勇気や度胸があってこそ花の山にたどり着けるということです。 大衆に踏みしめられた道にはもう花はありません。 捨てる神あれば拾う神あり。成功を手にするのはいつも少人数です。


バブルのように急上昇し高値を付けた銘柄は その後山火事に合ったように急落する。この時大勢の人が逃げ出します。 その焼け野原になった大地に種を撒くこと、これこそが投資の醍醐味。 倒産しそうな株、潰れそうな株の再興、新興市場のベンチャー会社、弱小中小企業銘柄など、 企業価値が低い株の成長や仕手化こそが最も面白い投資妙味、稼ぎどころです。 株式用語ではバリュー投資と呼ばれるものです。 実際に儲けた人や儲かった先人や偉人には、バリュー投資で 資産を形成した人が多い。それほどハイリターンが見込めるの投資手法なのです。








買いにくい相場は高い。買いやすい相場は安い


買いづらいと感じる株は次次好材料が出てきて値をどんどんあげていき、
買いやすいと感じる株は次々悪材料が出てきて根が安くなる。
株価は常に将来性の反映なので、上がり始めると、高値を更新することが多く、 下がり始めると、安値を更新する傾向がある。 株価は一度動き出すと、異常なほど極端にブレはじめ、やがて落ち着き収束していきます。 ちょっと安い、高いからといって底値か天井かは判断基準が難しいというわけです。
もうはまだなり、まだはもうなりという格言もあるように、 「買えない」「売れない」と感じる局面でこそ成行買いや指値買い、 ナンピン買い、押し目買いなどの積極的な注文すること、 あるいは腰を据えてがっしりと中長期でのホールド、利益確定したい衝動を 抑え、株を持ちっぱなしにすることが 求められます。








強弱よりも、運用を学べ


テクニカル分析、チャートを見ても、株価予想は完璧にはできません。
自己資金の範囲内でリスクを抑えた投資ができるか。
ローリスクハイリターンの運用技術を学べという意味です。
予想外に外れた時に資金的に再起不能に陥らないことが相場では大切です。
生き残って再チャレンジすることさえできれば、いつでも立ち直れます。








遠くのものは避けよ


自分が良く知らない謎めいた会社は避ける。 身近な会社であれば、商品やサービスの売れ行き、社員の顔色、 インサイダー情報とは言わないまでも投資のヒントや、業績の兆候が見えます。 何をしているかわからないブラックボックスの会社よりも、 全面ガラス張りでオープンな会社に投資をしたいものです。








いのち金には手をつけるな


資産運用、株式投資は心にゆとりが無ければ成功しません。 頭に血が上った異常状態では客観的で冷静な正常の判断ができない。 相場は揺れても心は不動とはいかず、命を賭けているが故に 些細な株の上下に歓喜したり恐怖、怯えてしまいます。 凝り固まった自分の考えだけで全てを賭けてしまい、取り返しがつかない失敗をしてしまうこともあります。 株式投資は余裕資金で行う。これはリスク回避だけでなく、株で儲けるための心理法則でもあります。








人の商い、うらやむべからず


書籍やニュースで「株で儲けた人の成功法則」「デイトレードで一億稼ぎました」なんて 本が販売されていたりニュースが流れています。 こういうものを見ると、誰もが「簡単に儲かりそうだ」と真似をしようと試みますが、 大部分の人は失敗します。 他人の成功話は、それが公開された時点で既に使い古された情報の可能性が高い。 株式ブログや掲示板の注目ランキングに載るような銘柄は 既に上がりきっている事が多く、リスクが高い状態なこととよく似ています。








美人投票の論理


イギリスの経済学者ケインズが投資家心理、行動を例えた格言です。
通常の美人コンテストは自分の好みのタイプに票を入れる。
そこに特別な条件として自分が票を入れた女性が優勝したら 賞金を出すことを加えると、大衆が選びそうな女性を選択しようとする。
株式投資は自分が好きなタイプというだけではなく、他の人が選びそうな 買いたいと思う銘柄を選ばないと儲からない。 自分の好き嫌いだけでなく、大衆の選択基準に従わないと勝てないというわけです。








相場巧者は孤独を愛する、幽霊と相場師は寂しい方に出る


真の投資家は株の売買、トレードや取引をする時、 自分ひとりで物事を考え実行します。 初心者や入門者、株をやり始めたばかりのビギナーは 、新聞が推奨している株、口コミや高い評価が噂されネット上の掲示板に流れている情報を参考にして売買し、 仮初めの「安心感」を得ている。皆が噂している銘柄だから安全だろう 、なんて気持ちになっている。
大衆の意見に自分の心理が左右されてしまう人は相場に向きません
人の言うことに耳を傾けず、自分のルールだけに従う人は常に稼げます。


株をしていると、「債務超過で上場廃止になるかも」「倒産しそう」「潰れそう」「業績が下方修正されそう」「 チャートが下降トレンドで底抜けして下がりそう」「天井かも」 「もっと上がる」など あらゆる疑念や噂が渦巻いています。 この中のどの情報を信じるかは全て自分次第。 人のおすすめする銘柄においそれと手を出してしまう人は必ず将来痛いしっぺ返しを食らいます。 閑散としていて参加者が少ない銘柄ほど、将来的に大繁盛、大商いへと成長する 出世株になる可能性を秘めています。








損する忍耐より儲ける忍耐


人間心理として、損失を確定させたくないという強い本能があります。
自分の行動が失敗だったと後悔したくないから自己正当化してしまう心理です。
これは恋愛の行動にも言える事で、とんでもないダメ男でも 付き合い始めてしまうと「私は魅力的な男と付き合っている」と 錯覚して強く思い込んでしまう。それは労力や時間、コストを無駄にしたくない、 「損をしたくない」という思いがあるからです。 心理学用語では認知的不協和所有効果が合わさった状態です。


含み損、損失を出して全く動かないジリジリと右肩下がりの下降トレンド、 塩漬け株を 凄い忍耐力で持ち続けてしまう人が多い。それは欲があるからです。 逆に利益が出ると、すぐに売りたくなってしまう。それは今すぐに 利益を確定して「得したい」 という欲があるから。人間の損得勘定は強く行動を縛りつけます。 成功者、勝利者は損小利大で上昇トレンドの株を「果報は寝て待て」で 中長期の純投資で持ち続けます。 逆に損してしまう失敗者、敗北者は損大利少で 将来的に値上がりする銘柄をすぐに手放してしまう。


高値覚え、安値覚えという言葉があります。 過去の高値や安値を見ると、「またその地点へ行くのではないか」 と思い込んでしまう心理の仕組みです。これもまた失敗の元、 相場は天井も底もその時々によって変化して決まったラインなんて存在していません。 過去は過去の事と冷静に見極める目が肝要です。 大衆とは逆の動きをする肝の据わった人だけが勝てるのが株式投資です。








利食い千人力、見切り千両


株は売らなければ利益を手元に置くことはできません。 どんなに含み益を抱えている状態でも、 抱え込んだままで現金化しなければ、今度は逆に含み損になって 顔面蒼白状態に陥ってしまうこともあります。こうなると 後は売るに売れない塩漬けの心理状態になり大損してしまいます。


こんな時に株を見切り損切りすれば、千両の価値があると言われる。
損切りも利食いもした方が精神的にもゆとりができて優位に立てます。
損切りした場合は反省を生かしながら気分の切り替えができ、
利食いをしたら次の株取引、 トレードも調子よくトントン拍子に物事が運びます。
これと併せて覚えておきたい格言、名言は 「利食いは腹八分」というもの。
株は一発勝負で一括で売り買いを決めるのではなく、上昇したら8割売り、 さらに上昇したら残りの2割を売る、 あるいは下がったら押し目で3割ナンピン買い、 買い増しをする、というように利益を確定しつつリスク管理をし 、リスクをコントロールしながらも、利益の最大化を図ることが重要だという格言です。








悪材料出尽くしは買い


株価は常に将来を先読みして動くのがセオリーです。
業績が年々悪化し悪材料が出続けて後は、リストラや経費削減などを 試みてなんとか赤字を解消しようと企業努力が始まります。 チャートが右肩下がりをしつづけ、さらに株主優待や配当金の廃止などの悪材料がさらに 発表された途端高騰し始める銘柄があります。 「セリングクライマックス」と呼ぶこのタイミングが悪材料出尽くしの良い例でしょう。


右肩下がりの下降トレンドチャートの場合、好材料が出ても織り込み済みで底値まで下がり続けます。 それは需給バランスを改善させる(カモに株を手放せさせる)ために その株を狙っている証券会社や仕手筋が空売りや現物売りをぶつけて相場操縦、操作するからです。二番底は黙って買え と呼ばれるのもこのためです。 ただ、悪材料が出続けても改善の余地がない会社の場合、そのまま倒産、 潰れてしまい株券、株式の価値がゼロになってしまうこともあり注意が必要です。








つかぬはやめよ、迷ったら手仕舞え


どんなに実力がある上級者でも運が無い時はうまくいきません。
いったん歯車が狂始めてギクシャクとし始めたら 腰を落ち着けて相場を休みましょう。「休むも相場」「思いつき売買は後悔の元」 なんていう格言もあります。冷静さを失い欲に目が眩んだ状態での売買は 損失が雪だるま式に増えます。少し立ち止まり休憩することを覚えましょう。
株式市場では千載一遇のチャンスと呼べるものはいくらでも訪れます。
目を真っ赤にして必死に銘柄のスクリーニングをしなくても、 yahoo掲示板や、yahoo株式ランキングのストップ高、ストップ安、 値上がり、値下がりランキングをチラチラとヒマな時間にみているだけで十分です。
少し腰を落ち着けて一休みしていれば、チャンスが勝手に転がり込んできます。








株の心理学、重要用語まとめ


これまで株式投資の心理学の様々な雑学やコラムのようなことを書いてきましたが、 その中でも特に覚えておきたい用語を復習としてこの項にまとめておきます。 ここだけ見ても株の心理学の半分ぐらい重要事項は理解できるでしょう。








損失先送りバイアス


10%の含み益、10%の含み損が出ている株を持っている場合、
利益をすぐに確定させ、損失は確定させたくないという投資の心理です。
人間は利益はすぐ様欲しいと感じるが、損失や損害はできるだけ 後回しにしようとする。 これは稼げない負ける投資家の思考そのものです。
俗に言うコツコツドカンという大敗を生み出す心理の仕組みです。
上昇トレンドは継続することが多く、一度急上昇したり、微妙に上がりだした銘柄をすぐに 利益確定(リカク)してしまうよりも、長期ホールドした方が 確率的にはリターンが大きいと考えられてます。


この負け組状態から勝ち組状態へと変化させるためには、
大きく勝って小さく負けるように相場を張ることが重要です。
法人、機関投資家やプロトレーダーは上昇トレンドに入ると次々ナンピン買いや
ピラミッティングと言われる手法で持ち株を増やし、利益を倍々にしていきます。
見切りは早く、利益は最大まで伸ばす。こうでなければ儲かりません。








サンクコスト効果


自分がした行動を無駄だと思いたくない心理がサンクコスト効果です。
これは仕事、恋愛、株、なんでも当てはまり無意識でハマってしまう事が多い。
恋愛の場合は、一度デートを許してしまうと、大して好きでもないのに 情が芽生えて付き合ってしまう。仕事の場合は、せっかく ここまで来たのだから商談を成功させないと引き下がれない。 株式投資の場合は、自分が投資した銘柄なのだから、 「絶対に利益が出ないと気が済まない」などという心の動きです。


人は後悔したり、自分の過去の決断や行動が失敗だと認めたくないので、
頑なに現状を自己正当化しようとする。間違った投資戦略だと わかった時点で、素直に撤退、手仕舞い、損切りすることが株で稼げる勝ち組になるコツです。
一度下がった株がもう一度上がるかもなんていう期待は幻想でしかないのです。








現状維持バイアス


人は現状から約2倍以上の幸福が得られる選択肢にしか変化しようとしない。
含み損の株を売って優良株を買うよりも、含み損が解消されるのを 待ってしまう。現状を変えるのは精神的なエネルギーが必要。 超一流の上級者デイトレーダーは、すぐさま変化に対応する 心の瞬発力を備えている。
状況が良い時は現状維持をする必要がありますが、 自分が悪い状況に追い込まれていると感じたらすぐに 反省し、現状を打破できるようにしよう。 特に投資家にとって成長見込みがない会社の塩漬けほど愚かな行いはありません。








確証バイアス


確証バイアスは自分の仮説に合致する情報ばかり収集しようとしてしまい、
自分が思い込んだことをまったく疑わず信じ切ってしまう心理状態です。
確証バイアスの状況にある人は、自分の論理の裏付けとなるような 文献や情報しか見なくなり、自分の理論に相対するものや反論 にはまったく耳を傾けず、見もしなくなる。
常に自分を疑うことを怠らず、自分が間違えている可能性を頭の片隅に入れておく必要がある。 「無知の知」とはよくいったもので、自分が頭がいいと思ってふんぞり返っている時ほど 大失敗、損失を被ってしまいやすい。逆に 「自分はまだまだ未熟で修行が足りない」と謙虚な気持ちでいると失敗する 可能性は低くなります。








群集心理の法則


人は目の前にいる人と同じ行動をしてしまいやすいという。
株で言えば高値掴みがまさにこれです。
特にザラ場を眺めているデイトレーダーにとっては、 どんどん買い注文が入り値段が上昇している銘柄はついつい手を出したくなる 魅力があります。しかし、それは初動か材料など、上昇余力のある状態でなければ、 1日のピークの値であることが多く、大抵は瞬間的に損をしてしまいます。 株は一般投資家の逆の動きをしなければなかなか儲かりません。 勝率を上げるためにも、前に倣えや人から教えてもらった銘柄を おいそれと買わないようにしましょう。








どれも少し頭を使ってみれば簡単な注意ごとです。
しかしお金が絡むと人の思考回路はショートしてしまい正常に機能しません。
自分の弱さを理解して冷静に対処できる資金管理能力は株式投資は必須です。
プラスマイナスゼロはそこまで悪い事ではありません。
焦ってお金を失うのは容易い事、株を買う前にじっくり腰を落として考えましょう。











最後に一言





株で簡単に儲ける方法なんてありません!!!


個人投資家の8割が損をしていて、残りの二割しか得をしていない市場です。
生半可な覚悟で始めると、90%以上の確率で大損します。
軽い気持ち、中途半端な気持ちでやるぐらいなら絶対にやらない方がマシです。
株で楽に、簡単にお金を稼げるなら今頃みんな大金持ちです。
「余裕資金で遊んでみるか」と考えていると確実に損をする世界です。
市場で飯を食っているプロがいるのですから素人が勝つのはなお難しい。



短期売買、デイトレード、中長期投資、スウィングトレード、システムトレード、
チャート、ファンダメンタル、テクニカル、センチメンタル等。
どのような分析、売買手法であっても、確実なものは存在しません。
どんなやり方でも「儲けた人」もいるし、「損した人」も存在します。
人から吹き込まれた情報なんて余程信頼できる人以外は当てになりません。
噂や値動きに一喜一憂せず自分自身の胆と信念に基づいて投資をしてください。


株式投資の心理学で、自分の欲や弱さについて理解できれば大きな前進。
頭を冷やして相場の断片だけで判断せず多面的に観察できるよう心掛けよう。
損失は最小化、利益は最大化できるよう、精神力、メンタル面を鍛えましょう。
相場に王道なし、天才数学者よりも奇人変人の方が一攫千金で大金持ちになれる世界。 心を磨き挑戦してください。株は幸運が必要なこともさることながら。
自分の考えを信じて貫く肝や度胸こそが最も重要なことだと思います。
どんなに素晴らしい計算や予想ができても行動が伴わなければ勝ません。
人の儲け話に耳を貸さず、自分自身の力で考える習慣をつけましょう。



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